研究課題/領域番号 |
25381055
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研究機関 | 広島女学院大学 |
研究代表者 |
中村 勝美 広島女学院大学, 人間生活学部, 准教授 (40310924)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ロンドン大学 / 高等教育 / 学位 / 学士課程教育 / 大学改革 / イギリス / 19世紀 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1830年代に学位試験・授与機関として成立したロンドン大学が、試験実施組織から教育機能を有する大学(teaching university)へと再編される過程に焦点をあて、学位試験・授与の連合制原理と大学間連携による学士課程教育の質・水準保証の問題を歴史的に考察することである。 本年度は、昨年度、ロンドン大学等で収集した資料の分析を進め、ロンドン大学の学位試験改革の二つのプロセス、すなわち1858年の科学学位の創設、1900年の学内学位、および学外学位の創設について分析した。その概要については、第58回教育史学会において報告(19世紀末ロンドン大学における学士学位試験改革)を行った。 次に、学位授与における連合制原理について、そのモデルとなったケンブリッジ大学における筆記試験の定着過程、「大学=学位試験・授与」、「カレッジ=教育」という機能分離の過程について分析し、ロンドン大学での学位試験の実際について、論文「イングランドの大学における連合制原理に関する歴史的考察」にまとめた。 以上の作業を通じて、これまでわが国ではほとんど研究されてこなかったロンドン大学について、学位の水準・質保証にはたしたその意義が明らかになった。 また、研究の過程において、ロンドン大学の学位枠組から早期に独立し、市民大学として独自の発展を目指したバーミンガム大学の重要性が明らかになり、3月末に渡英して基礎的資料の収集を進め、研究計画について再度レビューを受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ロンドン大学の調査委員会報告書を入手し、学位試験受験者数、学位取得者数等からロンドン大学の学士課程の量的把握を行うとともに、学位試験改革の主要アクターについて、特に学位の水準・質保証の観点から、分析することができた。 したがって、当初の計画通りに研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ロンドン大学学位、および入学登録試験の社会的評価について分析する。当時の人々にとって、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学に次ぐイングランド第3の大学であるロンドン大学の学位は、どのような価値をもつものであったのか、新聞や学校教育機関の資料をもとに分析する。 また、党派的論争が頻出するロンドン大学改革のみに焦点をあてるのではなく、市民カレッジとして、最も早く自立したバーミンガム大学から、学位授与における連合制原理の意義について相対的に明らかにする。 研究を推進するために、新聞データベースの活用、イギリス中等教育史研究者との研究交流を積極的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初はイギリスより研究者を招聘し研究会を開催する予定であったが、日程の都合がつかず、国内の研究者を招聘しての研究会となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
招聘できなかった研究者との研究打合せのための旅費として使用する。
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