研究課題/領域番号 |
25381056
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研究機関 | 山口学芸大学 |
研究代表者 |
松村 納央子 山口学芸大学, 教育学部, 准教授 (50341136)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | F.フレーベル / 自然 / J.シュミット / 数量 / 教授 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、教授領域としての自然諸学に関するフレーベルの方法論として、特に数量の教授に着目してFr.フレーベルの思考形式上の特色を導き出そうとした。この課題に際し、フレーベルの手稿「母親のための数論の基礎 シュミット」(ベルリン陶冶史研究図書館所蔵)の読解と『人間の教育』に収められた教授理論とを比較検討し、その研究成果の一部を日本ペスタロッチー・フレーベル学会第33回大会(平成27年9月5日、於 大阪人間科学大学)にて発表した。手稿の表題に含まれている「シュミット」とは、ペスタロッチーの協力者J.シュミットのことである。シュミットはペスタロッチーの学園において代数学の教授方法を精緻化した人物で、フレーベルが学園滞在時に近しくしていた。この手稿の読解を通じて、フレーベルが様々な量の連続的な変化を表す数の体系を扱っていることが明らかとなった。 フレーベルはその教育理論に原初的形態(調和)から多様な分化(不調和)へ、そしてまた統合的調和へという弁証法を採用している。手稿で展開された教授構想を参照すると、フレーベルにおいては原初の調和から多様な分化、統合的調和を理解する過程と数量の教授過程とが一致していることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フレーベルの未刊行資料読解に際し、特に数量との連関が深い19世紀当時の自然科学を参照しながら検討を進め、学会大会での口頭発表をおこなった。しかし、フレーベルの思考形式と教育実践との連関を示唆する成果を研究論文にまとめるまでには至らなかったため、さらに資料の読解を進め、成果公表を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は前年度までに果たせなかったフレーベルの自然哲学に関する研究論文をまとめたい。本研究の前提として、19世紀前半の自然科学の文脈においてフレーベルの著述を読解すると、その理論は認識論であると同時に進化論的な側面も有しているとの仮定がある。それは、教授対象ならびに教授方法にも援用されていることを示したい。フレーベルの教授論においては、教授対象としての自然界を「作用的な対象」(鉱物界)・「生きている対象」(植物界)・「生きて活動する対象」(動物界)とに区分して展開する。これらを認識する方法論・教授論についなお、6月にドイツ・カッセルで開催される第7回国際フレーベル学会大会に参加し、諸外国の研究者からの助言・示唆を得たい。
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次年度使用額が生じた理由 |
未刊行資料の収集と読解を進めるうち、当初比較を想定していた既刊行資料の対象が拡大、大学在学時(1811-1816年)以前の著述、ならびに教育舎経営時代(1816-1831年)以降の幼児教育に関する著述も含めて考察対象とし、研究を補完する必要があると判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の経費は、主として国外の調査・学会参加旅費にあてる。6月にドイツ・カッセルで開催される第7回国際フレーベル学会大会に参加する予定である。
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