フレーベルが基礎教授、特に数の教授を重視したのは彼の自然哲学による。観察対象が有する規則的性質を記述する方法へと導くために、数を用いた事物の把握を前提としたのである。彼が師事した結晶学者ヴァイスの論に関する書付(1816)において、自然諸学において多様性・特殊性は可視の現象である、または可視のものとして人によって図式化できることが記された。多様性が可視の現象と位置づけられる際、単一性はむしろ内的で静的な事態として捉えられる。ただし、この静的事態とは不変を示すものではなく、何らかの形に還元される構成された集合体単位としての一という意味合いを有する。この静的事態をフレーベルは単一性とする。 以上の思考枠組みの下、事物の多様性と単一性への教授上のアプローチにおいて、フレーベルはシュミットの数の教授論を援用しつつ、数の教授にとどまらず、植物学の領域における数の援用を展開した。植物学教授のための推敲(1828)に、フレーベルは花冠の序列ならびに葉序に着目、花冠や葉といった植物の構成体に回転対称性があることを記している。その際、花弁や葉の出現様態を回転軸の設定と基点からの角度に着目している。 これらの所論は幼児教育に専心以降、教育遊具にも援用された。特に第3教育遊具の扱いにおいてまず数およびその系列を確認する母と子の対話を伴った遊具の操作である「認識の形」が企図され、身近な事物を形作る「生活の形」、対称図形が次々と形作る「美の形」の領域においては空間認知ならびに事物の規則性が看取しうるよう構想されたのである。近年のドイツの研究ではフレーベルの遺稿の分析が進み、動的な過程の中で認識を育む遊びとしてフレーベルの再解釈が進んでいる。本研究でも変化の途上にある事物をいかに説明し、認識へと導くかは、運動の観察と再現が肝要であること、そのための教授・遊びの構成が企図されたことを提示した。
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