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2013 年度 実施状況報告書

植民地朝鮮における総力戦と教育‐朝鮮人児童の「皇国臣民の錬成」を巡る構造‐

研究課題

研究課題/領域番号 25381057
研究種目

基盤研究(C)

研究機関志學館大学

研究代表者

有松 しづよ  志學館大学, 人間関係学部, 講師 (70623437)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード植民地朝鮮 / 総力戦体制 / 朝鮮人母親の「皇国臣民」化 / 朝鮮人高等女学校生徒 / 「軍国の母」教育 / 家政科の新設 / 修練 / 学徒動員
研究概要

①論文「日本統治下における朝鮮人高等女学校生徒の「皇国臣民」化」(『植民地教育史研究年報』16号)日中全面戦争勃発を機に総力戦体制に突入した朝鮮において、朝鮮人の「完全なる皇国臣民」化が朝鮮総督府の課題となった。なかんずく朝鮮人の徴兵制度を円滑な展開を阻む存在として顕になっていた朝鮮人母親(以下、母親)の「皇国臣民」化が喫緊の課題となった。本研究では近未来に母となる高等女学校朝鮮人生徒に期待された「軍国の母」教育の方法や内容、目標像を明らかにした。新設された家政科および「修練」において、「軍国の母」としてのあり方および日本人としての生活習慣や「正しい」日本語の習得が目指されようとしていた。しかしながら「学徒戦時動員」発令により限界を迎えた。
②研究発表「日中戦争を機とした学校教育の変容」(KS-DP研究報告会、於九州大学韓国研究センター)日中全面戦争勃発による朝鮮の教育の変容を明らかにした。1938年4月に改正教育令が施行され、日中戦争勃発後直後から、学校教育の目的を「皇国臣民」の「錬成」におき、「愛国日」等に係る行事の実施や「皇国臣民ノ誓詞」朗誦や「皇国臣民体操」の体験による教育が展開されていた実態を学校法規に明記することで制度化した。知識伝達型や精神訓練型教育を否定し、「児童生活の場に有効適切な課題場面を生成」することによっての人間形成を目指した国民学校教育構想が公文をもって先行実施されようとしていた。これにより、学校の名称が統一、朝鮮人生徒児童は「内地人」と同一教育制度の下で教育を受けることになったが、実態は従前とかわらないものであった。
③史料収集「日本統治下朝鮮における総力戦体制期の座談会」総力戦体制期の座談会に注目し、掲載誌から史料として抽出、収集した。以下はこれまで収集した史料である。『文教の朝鮮』『緑旗』『新女性』『モダン日本朝鮮版』

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度の研究計画のうち、①「総力戦下植民地朝鮮における改正教育令と初等教育」については、概ね達成することができ、次のようなことを明らかにした(平成25年8月に九州大学韓国研究センターKS-DP研究報告会にて発表)1938年4月から施行された改正教育令は、日中戦争勃発後直後から、学校教育の目的を「皇国臣民」の「錬成」におき、「愛国日」等に係る行事の実施や「皇国臣民ノ誓詞」朗誦や「皇国臣民体操」の体験による教育が展開されていた実態を学校法規に明記することで制度化したものだった。実践においては、「この方針を如何に具現出来るかといふことを苦心」することに重点がおかれるようになった。知識伝達型や精神訓練型教育を否定し、「児童生活の場に有効適切な課題場面を生成」することによっての人間形成を目指した国民学校教育構想が公文をもって先行実施されようとしていた。教育令改正によって学校の名称が統一され、「内地人」の生徒児童と同一教育制度の下で教育を受けることになった朝鮮人生徒児童は、これまでとは「全く革新」した学校環境で学校生活を送ることになった。しかしながら、その実態は従前とかわらないものであった。
②「総力戦下植民地朝鮮における国民学校の教育」については、史料収集や韓国における面接聞き取り調査に遅滞が生じており、研究の途にあるが、平成26年度研究実績概要で示したように、朝鮮人の徴兵制度を円滑な展開を阻む存在として顕になり、朝鮮総督が喫緊の課題としていた朝鮮人母親(以下、母親)の「皇国臣民」化にかかる政策の一環であった高等女学校生徒の「皇国臣民」化の内容や方法、目指された像について明らかにすることができた(『植民地教育史研究年報』16号に掲載)。入手できた史料の関係から27年度の研究計画を一部前倒しに実施した。

今後の研究の推進方策

遅滞している平成25年度分研究「「総力戦下植民地朝鮮における国民学校の教育」について、面接聞き取り調査を実行する。加えて総力戦下で発行されていた国民学校児童にかかる雑誌史料を入手、総力戦下の国民学校教育の内容から国民学校において朝鮮人児童の「皇国臣民」化がどのように進められていたのかを明らかにし、成果として研究会等にて発表する。また当初からの平成26年度の研究計画「植民地朝鮮における不就学児童の教育動向」および「植民地朝鮮の国民学校教員の再教育」については当初の計画通りに研究を進める。

次年度の研究費の使用計画

韓国における面接聞き取り調査を計画通りに進めることができなかったために、次年度使用額が生じる結果となった。
今年度は韓国における面接聞き取り調査をできる限り進め、計画通りの成果をあげたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 「日本統治下における朝鮮人高等女学校生徒の「皇国臣民」化」2014

    • 著者名/発表者名
      有松しづよ
    • 雑誌名

      植民地教育史研究年報

      巻: 16 ページ: 26、49

    • 査読あり
  • [学会発表] 日中戦争勃発を機とした学校教育の変容

    • 著者名/発表者名
      有松しづよ
    • 学会等名
      KS-DP研究報告会
    • 発表場所
      九州大学韓国研究センター
  • [学会発表] 日本統治下における朝鮮人高等女学校生徒の「皇国臣民」化

    • 著者名/発表者名
      有松しづよ
    • 学会等名
      教育基礎学研究会
    • 発表場所
      九州大学

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公開日: 2015-05-28  

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