朝鮮人児童の「皇国臣民の錬成」について、なかんずく不就学学齢児童を対象とした錬成の理念と方式を明らかにしてきた。これまで大和塾における貧民層の家庭の子どもである不就学学齢児童の錬成がこどもたちに「善悪」を識別させ、不良化を防ぐとともに国語教育を通し日本国民としての精神を「陶冶」することを目的としていたことをあきらかにしてきた。今年度は浮浪児に対する錬成の目的と内容を京畿道の取り組みに着目して考察を進めてきた。総力戦期に朝鮮農村各地で深刻な水害や旱魃の被害が頻発したため、離農した人々が京城や釜山といった都市部に流れ込んだことから、浮浪児も市内に多く出現することになった。京城市内には一時期2000人はいたと言われている。浮浪児の出現は「都市の美化」という点と「チンピラ」と言われていた層によって犯罪に利用されるという問題も引き起こしていたため、各都市は対策に追われることになった。史料からその内容をみることができる京畿道では慈善団体等の協力を得て保護施設等の確保に努めるとともに、自らも浮浪児保護施設仙甘学園を設立する。建設にあたっては映画『家なき天使』を制作して寄付を募っている。『家なき天使』は日本内地の警察関係者が集めた資金によって韓国人が設立し、総督府も積極的に関与していた香隣園をモデルにしている。錬成の目的と方式については仙甘学園と映画のモデルとなった香隣園での錬成に着目して考察する予定で史料の整理を進めてきたが、成果として発表できるまでに至っていない。今後も継続し、成果として発表する予定である。
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