前年度のTIMSS2011調査のカリキュラム質問紙の分析(小学校第1学年から第6学年における生物領域の六つのトピックのそれぞれが、参加国のカリキュラムに含められているかどうかを示したデータに対して、確認的因子分析モデルの一つである加法モデルを設定し、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いてベイズ推定を行ったもの)において、異なる事前分布の条件を複数用意してシミュレーションと実データの分析を行った。その結果、前年度の同欄に示した分析結果(「人間の健康」と「環境の変化」のトピックについて、参加国の平均に比べれば日本の小学校理科カリキュラムで扱われていないこと)は、他の条件下でも概ね変わらなかった。 また、日本におけるTIMSS2011調査の中学校第2学年理科の公開問題のテキストデータに対して、問題ごとに単語の頻度を数えたデータに基づいて単語-文書行列を作成し、この行列に対して非負値行列因子分解を行い、クラスタを四つ得た。クラスタの解釈から、これらの理科の問題では、ある語が他の特定の語と共に用いられていることがあり、こうした語のまとまりが、理科の内容を一部指し示すことが示唆された。さらに、各問題の履修状況と上記のテキスト分析の結果得られた各問題の特徴が、難易度や識別力といった解答データから得られる各問題の特性を説明するかについて、項目反応モデルによって検討した。その結果、履修している問題の方が易しく識別力は高い傾向にあること、あるクラスタと関連度が大きい問題ほど易しいこと、及び、別のクラスタとの関連度が大きい問題ほど難しく識別力は低いことが示唆された。1点目と3点目の結果の解釈から、「エネルギー」という語が含まれた履修していない生物領域の問題の正答率は、他の問題より低いことが確認された。 加えて、上記の公開問題の日本語版と英語版の評価者による難易度比較を試行した。
|