研究課題/領域番号 |
25381066
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
清水 一彦 筑波大学, 副学長 (20167448)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 単位制度 / 学修 / GPA |
研究概要 |
本研究は、硬直化、形骸化が叫ばれて久しいわが国の単位制度の制度設計の基本ミスを実証的に指摘するとともに、国際通用性を視野に入れながらわが国独自の日本型単位制度の導入をめざし、政策提言しようとするものである。初年度に得られた知見は、以下のとおりである。 (1)「1単位45時間の学修」は、当初、1週間の平均的な労働時間に合わせて考えられたものである。わが国では、昭和22年に労働基準法が制定された際に、1日8時間、週48時間が最長労働時間とされたが、平均としては土曜日5時間の45時間であった。その後労働時間の短縮が大きな課題となり、昭和62年の労基法改正により、週の労働時間は最長40時間となった。労働時間の規制は、原則として、現実に働いた時間としての実労働時間により行われており、その意味では45時間も実労働時間という考え方であり、現実の90分=2時間などという運用は規定とはかけ離れていた。 (2)「1単位45時間の学修」というわが国の定義は、米国における「1単位=1科目週1回1学期+満足な学修成果」とは根本的に異なるものである。前者は、数量的な基準に重きが置かれ、後者は、数量的基準と質的基準との併用といえる。 (3)わが国の「1単位45時間の学修」は、卒業要件との関係において明らかに2学期制(セメスター制)の下で作られた基準であり、学期制を無視したものとなっている。 (4)米国における「満足な学修成果」は、単位制度の数量的性格を補完するものとして考えられ、その制度的措置としてGPA(Grade Point Average)を開発することになった。以上から、わが国の「1単位45時間の学修」の定義は、時代錯誤的非現実性を有し、しかも国際的通用性を持たないものであることが明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は文献研究と高等教育研究者への聞き取り調査に重点を置き、わが国の大学の「1単位45時間の学修」の非現実性と非国際的通用性を明らかにすることを課題とした。得られた知見で言及したように、この目的は達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は文献研究や聞き取り調査の結果を踏まえて、新制大学発足時の文書分析のほかアメリカなど諸外国の大学における実際の運用状況を調査しながら、掲げた課題を達成していきたい。具体的には、次の3つの推進方策を考えている。 (1)大学設置基準に明記されている「学修」と単位制度との密接な関係が明らかになったので、新制大学発足時の関連文書を収集し、その背景や要因を分析・考察していきたい。 (2)アメリカの大学制度は大きく東部、西部、中西部及び南部の4地域によってそれぞれ特徴があるので、各地域の代表的な大学のカタログや現地調査を行い、実際の運用状況を明らかにしていきたい。 (3)2年目の課題でもある単位計算方法に関しては、文献や資料だけでは十分なエビデンスが得られないため、この分野に詳しい研究者への聞き取り調査を行っていきたい。 なお、以上の推進方策によって新たな知見が得られた成果については、学会での発表を積極的に行うことにする。
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