本研究は、グローバル化時代における国際通用性を視野に入れながら、わが国の単位制度の問題点を指摘しながら、独自の日本型単位制度の導入をめざした制度改革を提言しようとするものである。その結果、以下のような単位制度の再構築をめざした大学設置基準改訂への政策提言をまとめた。 (1)週6日制時代の1週間の労働時間に合わせて作られた「1単位45時間の学修」という1単位の定義を見直し、週40時間労働制の下でしかも国際通用性のある定義を明示すべきである。アメリカでは、どのような学期制を採用しても1単位の定義は「1科目の授業を週1回1学期に履修すること」という単純明快なものである。週2回授業があれば2単位、週3回あれば3単位となる。このように定義を設定すれば、当然のことながら学期制によって卒業単位数が異なるが、それが国際通用性のある単位制度である。 (2)3種類の単位計算方法の規定を廃止し、講義・演習と実験・実習等の2種類とした上で、自学自習についてはシラバスで担保できるような規定を明示すべきである。単位制度については、選択制→単位制度→FD→シラバスといった連続的かつ繋がりをもった構造を有している。実際、アメリカの大学では自学自習はシラバスによって奨励されているといってよい。設置基準による単位の計算方法の徹底を図るのではなく、むしろシラバスの使命・役割の重要性とともに、シラバスによる自学自習の促進方策を掲げた方がよい。 (3)総単位数124単位については、最低基準という考え方ではなく、標準単位数として推奨するとともに、教育の質保証を担保する仕組みを明示すべきである。いかなる学期制をとろうとも、当初から4年間の学習量は標準的な考え方がとられている。わが国の単位制度の導入の際にも同様な考え方が存在した。しかし、設置基準に規定されたことからその最低基準の性格が強まり、教育の質保証の仕組みがない。
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