研究課題/領域番号 |
25381070
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小国 喜弘 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60317617)
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研究分担者 |
冨士原 紀絵 お茶の水女子大学, その他部局等, 准教授 (10323130)
浅井 幸子 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (30361596)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教育史 / 日本 / 戦後 / 授業 / 教育実践 |
研究概要 |
今年度は、研究のデザインを確認する作業とともに、基礎的なデータを蒐集する作業を主に行った。研究デザインについては、民間教育団体をどのようにして選定することが、60年代から70年代を俯瞰する上で妥当かについての議論を概ね月に一回から二月に一回程度のペースで研究会を開催した。現段階において、教育科学研究会のいくつかの部会に焦点をしぼって来年度以降の研究を深めていくことで合意を得ている。 同時に、基礎的なデータ蒐集として、当該時期の教育実践記録の蒐集につとめた。この時期の記録については、数も多く、図書館所蔵されていないものも多いことから、資料的な蒐集自体が非常に重要な作業であり、その点については有益な進展があったと考えている。 さらに、雑誌『ひと』や雑誌『婦人教師』など、当該時期に刊行されたいくつかの雑誌媒体を選定し、それについての聞き取り作業を行うことになった。 主な研究業績としては、小国喜弘「戦後教育史の転回点―教育実践概念への注目を通して」東京大学大学院教育学研究科基礎教育学研究室『研究室紀要』四一号(二〇一四年刊行予定)、浅井幸子「子どもの声を聴くーつぶやきから表現へー」『戦後幼児教育・保育実践記録集 第I期 表現する子ども―幼児の知性と人格発達へのまなざし―』(日本図書センター)、浅井幸子「勅使千鶴・亀谷和史・東内瑠里子編著『「知的な育ち」を形成する保育実践―海卓子、畑谷光代、高瀬慶子に学ぶ―』」『幼児教育史研究』(八号、二〇一三年一一月)などがある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、総長補佐という全学の役職をつとめる必要から、ほぼ毎日が会議で拘束されることとなり、研究を円滑に進める時間の不足を余儀なくされることとなった。20年ぶりの学部改革が進行中であり、その関係で補佐としての例年以上の注力を迫られることとなった。また、他の研究者も、新たに大学を異動したり、また学内不祥事への対応を急遽迫られることになったなどから、必ずしも当初の計画通りのエフォートを注ぐことができなかった。 これらは、昨年度の申請時点では予測し得なかったことであり(一研究者の大学異動を除けば)、その点において、不測の対応を迫られることになった。計画の遅れはこの点にまさに由来する。 今年度は、これらの障害が全参加者についてほぼなくなったことから、計画の遅れを取り戻すように注力する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.引き続き、資料の収集をすすめる。 2.聞き取りについて、六〇年代から七〇年代にかけて活躍した教師、研究者への聞き取りを精力的に展開する。 3.全体的な構想については、次の通りである。昨年度の研究を通して、一九七〇年前後に「教育実践」という概念自体が、教育界において大きく変化していったことを明らかにすることができた。すなわち、国家に対する抵抗の運動として理念化されていた時代から、教師と生徒との相互作用を含意するような一般的概念へと意味が拡張される時代への変化として要約し得る。この変化がどのような形において進行したのかを描き出すことが、まず今年度において重要な研究のテーマとなる。さらに新自由主義という新たな歴史潮流や、フーコー的管理から、ポストモダン時代の自由管理論と称されるような、新たな管理体制への移行という国際的な潮流が教育実践の側面にどのような影響を与えることになったのかについても考察を進めたい。 さらに各論として、教育科学研究会、同教授学部会などについて俯瞰する他、仮説実験授業、雑誌『ひと』の取り組み、部落解放同盟の取り組み、全国障害者問題研究会、全国生活指導研究協議会などについても検討を進めていく予定である。また、この時期には、全国に授業研究の公立のセンターが出来て、授業研究が本格的に進展すると同時に、住民や父兄を主体とする様々な教育運動が展開する時期でもあるが、これらについては、次年度に具体的な検討を進めることとしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度については、ヒアリングの日程を調整することがかなわず、関係者へのヒアリングの謝金を消化することが困難であった。 同時に、出張についても日程調整が困難であり、出張を伴うヒアリングや資料収集を行うことができなかった。これらのことから、今年度は、古書の購入による資料収集が主な支出項目となり、そのことにより、予算を次年度に繰り越す結果となった。 次年度については、今年度に達成することのできなかった、関係者へのヒアリングや地方での資料収集を積極的に行うことを計画している。予算は当初よりも多くなっているが、国税であることに鑑み、予算の効率的かつ適正な支出を第一に心がけるようにしたい。
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