研究課題/領域番号 |
25381080
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高旗 浩志 岡山大学, その他部局等, 教授 (20284135)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 昼間定時制高校 / 協同学習 / 授業改善 / 学校改善 / 校内研修 |
研究実績の概要 |
(1)授業実践場面に対するフィールドワークと教師へのインタビュー調査の継続 初年度に引き続きK高校の授業実践場面のフィールドワークを行い,日々の授業における教師の具体的な工夫とその成果,課題と限界の析出に努めた。初年度は,協同学習の技法の導入ついて,その形式面(座席配置,単元目標や本時目標の提示,学習課題と学習活動の展開計画の明示といった生徒へのはたらきかけ)の共有を重視したが,本年度はさらに一歩を進め,①学習課題に照らして生徒に自由度を与えること,②学習課題(めあて)の提示後,すぐに自力解決や活動に入るのではなく,課題に対する生徒側の「誤解」の有無等を検証する「課題の吟味」に時間を割くこと,③「ふりかえり」の場面で生徒と教師が学習活動を価値づけることを重視した。これらの取り組みの効果と課題を,K高校のプロジェクトチームと授業者とのケースカンファレンスに基づいて検証した。 (2)生徒特性の類型化と授業改善の効果の検証 初年度に整理したK高校の生徒特性の4類型に基づいて,具体的にどのような授業改善が必要かを検証する校内研修を年2回(11月と2月)行った。その際,K高校の全教員が個別具体的な課題意識をもち,これを教師の小集団によるグループワークに基づいて検証・解決するための「気づきを共有するシート」をK高校のプロジェクトチームとともに開発・運用した。K高校の従来の校内研修を抜本的に見直し,年間を通した授業改善計画を整理・構造化することで,相互の授業公開・観察に全教員が関与する,参画型かつ課題解決型校内研修の方法論を,K高校の実態に合う形で実現できた。 (3)「全国定時制通信制高等学校基本調査」の入手と分析 昭和49年~平成26年度の「全国定時制通信制高等学校基本調査」を入手し,データ入力を完了した。今後,特に「昼間定時制高校」をめぐる実態を明らかにする分析に着手する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) 授業実践場面のフィールドワークは平均して月に1日のペースで実施できており,平成26年度の授業観察時数は約40時間であった。当初計画に掲げた「自律的な組織的授業改善を促す校内研修モデルの提示」については,K高校のプロジェクトチームとの協議を踏まえ,まずは現状のK高校の実態に合うかたちで①日常の授業を相互に参観し,コメントを共有する「授業改善週間」を設定することができた,②①に基づき,「気づきを共有するシート」を用いた参画型・課題解決型校内研修の方法を確立することができた。これらの取り組みから,K高校の生徒の実態に沿い,これを改善することに繋がる知見の析出に努めているが,具体的な協同学習の手法を用いることと,特定の生徒類型との間に明確な効果性を析出することに試行錯誤を重ねている。また,昼間定時制高校をめぐる全国的な実態を把握するため,昭和49年~平成26年度の「全国定時制通信制高等学校基本調査」を入手し,データ入力を完了することができたが,素データの年度による形式上の不統一を整理することに時間を要している。このような実態から「(2)概ね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成27年度は研究計画の最終年度に当たる。本研究の最終的な着地点は,学校の自律的な組織的授業改善を促す校内研修モデルを提示することにある。その多くは,過去2年間の取り組みのなかで概ね達成されている。しかし,特に協同学習の理念と技法を導入する際に多くの教師が抱える困難を可視化し,その困難を克服するための「協同学習実践力自己診断シート」(試行版)を作成・運用する課題が残されている。最終年度では,これまでの授業観察や教師へのインタビュー調査ならびにケースカンファレンスを継続し,より実用的な「協同学習実践力自己診断シート」(試行版)の開発をめざす。 (2)「昼間定時制高校」の社会的な位置づけとその変遷を探るため,昭和49年~平成26年度の「全国定時制通信制高等学校基本調査」に基づいた分析を行う。とりわけ,K高校のような「市立・三修制・昼間定時制高校」の社会的役割を整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
特に物品費では,初年度に当初購入予定だった備品(デスクトップ・コンピュータ及びデジタルビデオカメラ)が,当初予定の半額相当の価格,なおかつ高性能の新製品を入手できたため,全体的に大きな繰越額が生じたことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成25年度の実績報告書に掲げたとおり,本研究の趣旨に照らして有効活用するため,昭和49年~平成26年度の「全国定時制通信制高等学校基本調査」を入手し,ここに記載の都道府県・学校別データを平成26年度に業者に依頼して入力し電子ファイル化することができた。その一方で,インタビューの記録保存のための文字起こしは平成27年度に行うこととした。その他,K高校への参加観察や成果の学会発表のための旅費,「協同学習実践力自己診断シート」(試行版)の開発等に有効活用する計画である。
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