最終年度は,初年度から3年目までに実施したK高校へのフィールドワークによって得られたデータの分析に取り組み,本研究の課題1~5について次のような結論を得た。 課題1:K高校では,協同学習に基づく授業改善が特定の方略を学校全体の総意として採用するところから始まった。しかしそれら(コの字型の座席配置,5分以上のグループ活動必須等)は形骸化を生み,教師のなかに協同学習への不信を招いていた。このような不具合を組織として共有し,取り除き,改善への有効な手立てをはかる授業改善計画は単年度では難しく2~3年を要することが明らかとなった。課題2:協同学習に係る特定の方略への不信感と忌避感が,多くの教師のなかに存在した。それゆえに,学校として合意形成しつつも,その教師になじんだ手法が常に優先しがちであった。特定の方略への習熟は生徒からの肯定的なフィードバックに支えられることが明らかとなった。課題3および4:「授業に対する積極性ー消極性」と「人間関係に対する積極性-消極性」により生徒の4類型を試みたが,生徒の学力とふさわしい授業形態については,さらに細かな整理分類が必要であった。個々の生徒に求める水準と方向性を教師は常に模索し,「その生徒にとってこの課題や教材や方略がどのような意味と価値を持つか」ということを「実践知」として授業中に発揮しようとする教師ほど,個々の生徒のニーズを把握しつつ,しかし,ニーズにおもねらず,教える側の必要と必然をあてがえる傾向があることが明らかとなった。課題5:教員の教科の枠を超えた4人班を単位とする「班別授業研究」がK高校に独自のスタイルとして定着した。具体的には「授業デザインの作成・配布→第1回授業実践→第1回協議→授業デザインの修正→第2回授業実践→第2回協議」の流れで,略案の作成・修正と実践の繰り返しを行い,班ごとに設定したテーマに沿う検証を行うスタイルである。
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