最終年度に当たる平成27年度においては、分権的教育改革の新しい展開における改革戦略の在り方の解明を行った。すでに、論文として発表しているKERA の導入背景や、アカウンタビリティ・システム、カリキュラム改革に関する知見を再度精査した。また、特に、教員制度改革のシステミック・リフォーム・コンセプトの中での位置づけについて、解明した。これらを通して、分権改革の新たな展開において形成されているシステミック・リフォームと呼ばれる改革コンセプトの持つ構造的特質が、システミック・リフォームと呼ばれる改革コンセプトは、学校教育を成り立たせている各制度は相互に結びつき全体として大きな系を形成しているのであり、個々別々の改革実施は関係している他の部分への意図しない影響を及ぼすことになることから、制度間の相互の関連性に注目して、全体を包括的に改革しようとするものであることが解明された。 また、上記の知見を考察することで、分権的教育改革が進む日本において、その効果的な遂行のための改革戦略の在り方、学力向上や学力格差の解消に取り組まなくてはならない状況にある日本の教育委員会が、効果的な教育委員会となるための組織機構改革の方途、そして、必要とされる教員の専門的な資質向上の在り方について試論的に解明し、学術論文としてまとめた(柳林信彦「改革期における地方教育行政制度の課題」教育制度学研究 、第22号、2015年11月、pp.136-151.)。 最後に、研究の深化と得られた知見の社会への発信として、高知県内の市町村教育委員会への教育政策形成への助言や、高知市内の中学校のコミュニティ・スクールの運営協議会の活動、あるいは、須崎市内の公立小・中学校での校内研修での助言活動の中でそれらの知見を活用している。
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