最終年度の研究は、①沖縄・ブラジル・ボリビアで得た青年と民俗芸能に関する知見をまとめ、国際会議での発表、②字青年会に関するアンケート集約、③奄美群島の青年会と芸能に関する調査、の三つに集約することができる。一つ目は、ロシアのレニングラード大学において開催されたThe 13th International Conference"Lifelong leaning:Continuous Education For Sustainable Development"に参加し、全体プログラムで「沖縄の自治と文化」に関する報告を行った。UNESCO関係者の間では、沖縄が「長寿の島」であることは知られているが、その自治的な実践やその中心に公民館があること、そして若者も自治と文化への参加が用意されていることなどに、関心を示された。東欧・ヨーロッパ諸国とは異なる日本の社会教育の多様性を再確認できた。二つ目は、初年度から実施している字青年会の芸能に関するアンケート調査であるが、沖縄県青年団協議会の総会、各市町村の総会、教育委員会の協力を依頼したが、回収数は26団体であった。市町村の偏りは否めないが、青年会の活動実態と芸能の関係について、全体像を明らかにすることができる。三つ目は、これまで沖縄・宮古・八重山と調査をしてきたが、琉球弧から考える上で奄美をはずすことはできないことから、徳之島の青年団と高校生が共同で取り組んだ「島口ミュージカル 結-MUSUBI-」に注目し、沖縄との文化交流の経緯や島への定着過程など、沖縄との比較を通して、奄美独自の文化受容を調査研究を行った。 沖縄県青年団協議会が毎年夏に開催してきた「青年ふるさとエイサー祭り」が、本年度は中止となり、本研究がテーマとしてきた文化継承と伝承に危機が生じた。県・市町村・字レベルにおける継承の意味合いが変容していることにも留意したい。
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