研究課題/領域番号 |
25381085
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
櫻井 常矢 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (40363775)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インターミディアリー / 中間支援施設 / 社会教育施設 |
研究概要 |
本研究の初年度は、研究計画に記載の通り、本研究課題の分析視点を構築するため、インターミディアリーや「新しい公共」に関する諸理論、社会教育・生涯学習施策、市民活動施策、市民参加システム等の政策・制度等に関する資料・文献の収集、整理、分析を行なった。特に調査研究上の知見を得るために、本研究課題に精通したシンクタンク機関(東北活性化研究センター)、研究機関(東北大学、同志社大学)からの情報収集にも取り組む。関連する文献・資料等、並びに情報処理機器等の必要備品の購入経費を申請通り計上している。さらに、再編後の社会教育施設の民間運営を進める(あるいは今後予定している)自治体・地域の概況について、国内の現地調査や情報収集を精力的に行った。再編後の社会教育施設事業の実現方策をめぐるインターミディアリーの学習機能に着眼する本研究ではあるが、その前提となる社会教育施設の運営主体(住民自治組織、NPO等)の課題、学習ニーズを分析することに重点を置いた。また、地域コミュニティ支援を目的とした中間支援組織・施設などの調査も進めている。事例としては、地域コミュニティ政策に先駆的に取り組む宮崎市、福岡県久留米市、山口県周南市をはじめとする市町村自治体、並びに沖縄、福岡、神奈川、新潟などで中核的役割を果たしている中間支援組織・施設への情報収集も進めている。これらを通して、再編後の社会教育施設をサポートする行政、並びにインターミディアリーの配置人材、提供される学習プログラム、そして支援をめぐる目的構築などに着眼しながら、その現状と課題の把握を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内の自治体・地域へのヒアリング調査や情報収集について、多様なケースに対して行ったことにより、インターミディアリーやその整備・設置に取り組もうとする自治体が有するいくつかの課題や研究上の視点が明らかとなった。第一は、行政や中間支援組織が実施する社会教育施設の運営主体を対象とした学習プログラムをめぐる課題である。調査事例からは、戦略性や目的の不明確さに起因するプログラムの課題が指摘できる。具体的には、行政や支援組織等が行う学習プログラムの成果(養成された人材)が、施設運営サポートや地域コミュニティ支援などに展開していく方策が準備されていないため、その効果を発揮しえないことなどである。第二は、社会教育事業のあり方へのアプローチをめぐってである。首長部局主導で進められる中間支援施設の整備・運営、そしてそれらを通した民間運営への支援のあり方が模索されていることは確かではあるが、注目すべきはこうした取り組みを進める首長部局の側から、公民館等の社会教育施設や配置される人材の役割に関する本質的な議論が進んでいることである。社会教育事業とは何か。地域づくりに果たす社会教育の役割とはどのようなものなのかをめぐる議論が自治体内部で盛んである実態が見てとれる。むしろ、再編後の社会教育施設事業の実現をサポートするインターミディアリーの構築をめぐって、社会教育行政がどのような役割を果たそうとしているのかを明らかにする必要がある。そして第三は、インターミディアリーに配置される人材の多様性である。行政職員、あるいは指定管理者となるNPOのスタッフが配置されるケースが多いが、例えば自治会役員を経験した地域リーダーOB、元大学教員等の専門家、地域の青年団体OB等、何らかの専門性や経験を理由に配置されるケースもあり、こうした人材のキャリア形成等も今後の調査課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
再編後の社会教育施設事業の実現方策に着目する本研究では、引き続き事例調査を継続し、その運営主体、配置人材、学習プログラム、その他関連する支援方策の観点からインターミディアリーの多様性の把握を重視したい。その際、第一に初年度の調査から明らかとなった社会教育事業のあり方への問いを含む学習プログラムに着目する。施設運営をめぐる諸主体を対象としたどのようなプログラムのもとで、社会教育事業(実践)は継続・発展するのかについてである。第二に、インターミディアリーの配置人材について、特にそのキャリア形成や研修プログラムなど人材養成の視点から調査を進める。社会教育事業の実現と登用される人材(キャリア)との間に何らかの関係があるのかについてである。第三に、初年度に着手できなかったこととして、特に社会教育行政によるインターミディアリー機能構築の道筋について明らかにしたい。行政自らがこうした中間支援機能を果たそうとするケース、あるいはその発展形として民間運営に移行するケースもあることなどから、その構築過程とその課題について調査を進めることとなる。第四に、海外の事例として地域コミュニティ支援型の中間支援組織の調査を進める。調査候補として、英国全土に展開するRural Community Councilなどがあげられるが、特に専門性や財政構造など組織運営をめぐるパートナーシップ形成、組織内部の人材養成プログラム、そして具体的な地域コミュニティへのアプローチの手法について着眼することになる。
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