研究課題
本研究は放射能災害による環境変化が子どもと保育に及ぼす直接的、間接的影響、また時間経過に伴う変化を中心に実態を明らかにすることを目的とした。平成25年度は管理職者面接調査、保育者面接調査、26年度は保育者面接調査、27年度は保育者面接調査、保護者面接調査を実施し、28年度(最終年度)は震災5年経過した状態の実態を主目的とした質問紙調査(福島県内260幼稚園、保育所、認定こども園)を実施した。面接調査による主な研究結果は以下のようである。管理職者面接では、災害時においては平常時の管理、人間関係、地域連携状況が顕在化し、保育の災害前状態への復帰の可否は災害時保育の保育者効力感との関連がある。保育者面接では、災害時保育の保育目標及び子どもの状態認識は保育形態による差異があり、同一年齢幼児の集団状況はコホートによって差異があり、子どもの状態に対応した意図的保育実践の積み重ねの効果が認められる。保護者面接では、価値観の類似性による結束によるストレス回避、主体的安全管理や自主的情報収集、自己決定と災害経験への自己肯定的意識の関連が認められる。質問紙調査では、震災後の保育(子育て意識)状態が継続する場合、震災経験を経て新たな実践に変化する場合、震災前状態に復帰する場合、震災前後に特に変化がない場合があり、その要因は多様で輻輳している。特に保育者においては、震災経験者と震災後養成、採用者とに意識の違いがある。自由記述には、将来への不安を根底に持ちながらの現状肯定的な記述が多数認められた。本研究結果から、大きな社会変動(環境変化)による保育(子育て)の変容を規定する要因、及び危機的状況における保育(子育て)の現実的な対応の在り方を示唆することができた。
すべて 2017
すべて 学会発表 (4件) 図書 (1件)