研究課題
本研究は、器楽活動の意義について発達的視点、脳科学的視点、身体論的視点、音楽教育史的視点から探り、フィールドワークとワークショップを通して、乳幼児期における器楽活動プログラムの構築を目指したものである。従来、音楽科教育における器楽活動の内容・方法において欠如していたと思われる、(1)音が出るモノ、楽器を用いた活動は他者との関係性を育む、(2)モノ・楽器を用いて音を鳴らすという行為は身の回りの環境と関わる事である、(3)モノ・楽器を用いて音を鳴らすという行為は自分自身の感覚を自覚するものである、という内容を重視した。発達研究、脳科学研究、哲学・美学研究等、関連領域の知見の整理を行い、(1)音の認識が他者との関係性を生み出すこと、(2)モノを使って音を鳴らすという行為そのものが、聴覚のみでなく、触覚、筋感覚等を同時に刺激する行為であること、(3)それが乳幼児の自己の意識の基盤となるということなどが指摘できたと考える。また、音楽教育史研究を通して、これまで先人たちが行ってきた音楽教育活動においても、ここに述べたのと同じような視点が散見されることを指摘した。これらの知見を基にして、保育の場で行う楽器遊びの活動例として、一般的な奏法に囚われず子どもの自由な発想を基にした楽器の活用、感覚間相互作用(クロスモダリティ)を活用した活動を提案し、保育現場でワークショップを企画・実践した。さらに、関連学会等での発表、書籍の刊行を通してこれらの内容を公開した。
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