研究課題/領域番号 |
25381093
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
北野 秋男 日本大学, 文理学部, 教授 (50169869)
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研究分担者 |
高橋 寛人 横浜市立大学, その他の研究科, 教授 (10188047)
石井 英真 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10452327)
高橋 哲 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10511884)
黒田 友紀 日本大学, 理工学部, 准教授 (60631851)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日米テスト政策 / 地方自治体のテスト政策 / 痴呆教育行政におけるガヴァナンスの変容 / ローカル・ミニマム学力保障 / ハイステイクス・テスト / 学校力 / キャパシティ・ビルディング / アカウンタビリティ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日米両国の地方自治体におけるテスト政策の特色や問題点などの実態調査を行い、日米両国のテスト政策の類似性と差異性を解明することである。本研究における本年度の研究実績は、以下の点を挙げることができる。 2012年度と13年度において行った全国の教育委員会(都道府県・市町村)に対するアンケート調査の回答をもとに、「独自の学力調査を実施している」という教育委員会を対象に面接調査を行った。面接調査を行った自治体は30(高知、愛媛、香川、群馬、栃木、茨城、神奈川、大阪、滋賀、岐阜、北海道)であり、学力調査体制の実態に関するインタビューを行った。こうしたアンケート調査と面接調査で得た情報をもとに、日本教育学会第69回大会「ラウンド・テーブル」(九州大学)において「全国の地方自治体の学力テスト政策の動向」と題して研究代表者の北野らが共同研究発表を企画・実施した。また、研究代表者・分担者・協力者が一堂に会して行う研究会も7月(東京)、12月(沼津)、2月(塩原)において実施したが、村山詩穂(佐賀大学)、山下晃一(神戸大学)などの専門家の講演も企画・実施した。 アメリカのテスト政策の研究に関しては、北野が教育思想史学会第24回大会(慶応大学)で「学力テストの暴力性」と題して、アメリカの学力テストの歴史的展開を報告した。研究分担者の黒田はマサチューセッツ州ボストン市、石井はカリフォルニア州の学力政策の実態を現地調査した。 2014年度においては、研究代表者・分担者は日本のテスト政策、ないしは関連する論文を19編、アメリカのテスト政策に関する論文を6編を学会紀要、大学紀要、書籍として刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、現在の日米における地方自治体の学力テスト政策の実態調査であり、学力テスト体制における構造の類似性と差異性を解明することであった。本年度は、研究代表者・分担者の研究活動は予想以上に成果が上がり、多くの学会発表、研究論文の執筆を行った。 日本の学力テスト体制は、面接調査によって30の都道府県・市町村教育委員会に対するインタビューを行い、それぞれの自治体独自の学力テスト体制の構造的特色を解明した。特に、地方自治体における学力テスト体制はローカル性はなく、全国的には共通しているものの、一部自治体で独自路線を歩む自治体も確認した。 アメリカの場合は、多くの州では新しいスタンダードである「共通コア・スタンダード(Common Core State Standards)」と新しい評価が導入され、批判的思考力を問う試験への移行も起きている。また、州統一テストの試験結果が学区や学校、そして生徒や教員評価にも甚大な影響を与えており、学区内においてもアカウンタビリティが厳しく問われているという実態も解明した。その一方で、学校の力(キャパシティ・ビルディング)を高め、学校内部における教員の協働が強く求められている状況も指摘される。
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今後の研究の推進方策 |
2015(平成27)年度は最終年度になるので、これまで行った日本の学力テスト体制に関するアンケート調査、面接調査をもとに構造的特色を解明する。その際には、各教育委員会が発行する学力テストの結果に関する分析報告書なども参考としながら、学力テスト、能力主義、教育格差などに関する各種の文献も参考とし、総合的な分析と解明を行う。 アメリカに関しては、さらに州の学力テストの実態を学区や学校の対応も考慮しながら解明する。対象とする州は、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、ワシントンDC、ケンタッキー州、イリノイ州、カリフォルニア州などである。その際には、テスト政策だけでなく、教育内容、教員政策、学校の統廃合、地方教育行政のガヴァナンスの変容、教育行財政などの諸改革などの分野も考慮に入れて解明を行う。 最後に、日米の学力テスト体制の構造的類似性と差異性を解明し、これを共同研究の形で学会発表する予定である。また、年度内には、これまでの研究活動、研究成果の一部を報告書してまとめ、刊行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の黒田友紀は、昨年の12月に国内(同志社大学アメリカ研究資料センター)に於いて、アメリカ関係の資料収集を予定していたが、体調不良のため、これを執行することが出来なかった。本年の1月と2月は校務多忙のため、再度の資料収集を断念した。 同じく研究分担者の石井英真は、京都大学より半年間(平成26年9月より平成27年2月)の海外出張(米国スタンフォード大学)を命ぜられ、この間においては研究費の執行が出来なかった。また、帰国後も校務多忙のため、本年度内の研究費の執行を断念した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、本研究の最終年度にあたり、これまでの研究成果を基に研究代表者・研究分担者の全員が、学会発表・研究会発表を行う予定である。従って、黒田、石井共に来年度は、本年度の未使用額を物品費や旅費などにあてる予定である。
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