研究課題/領域番号 |
25381094
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
坂田 仰 日本女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70287811)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 学校事故 / 自然災害 / 幼稚園 / 損害賠償 |
研究概要 |
2011(平成23)年3月11日,日本列島を襲った東日本大震災は,東北地方を中心に未曾有の被害をもたらした。学校現場もまた例外ではない。幼稚園から大学まで,犠牲となった在学者は,死者616名,行方不明者71名を数えるといわれている(平成23年度 文部科学白書)。だが,誰もが「想定外」と叫んだ自然災害による犠牲者に対し,誰がどのような責任を負うのか。学校設置者,教職員等の法的責任,特に損害賠償責任の在り方については,現時点において十分な議論がなされているとは言い難い状況にある。 にもかかわらず,2013(平成25)年9月には,東日本大震災送迎バス事故損害賠償訴訟(日和幼稚園事件)において,幼稚園側の過失が認定され,損害賠償を命じる判決が下される等,その法的処理が進められている。東日本大震災からの復旧が軌道に乗りつある現在,その法的責任が残された課題としてクローズアップされていると言える。研究初年度である本年度は,学校保健安全法と今後の動向を左右する可能性のある東日本大震災送迎バス事故損害賠償訴訟を手掛かりとし,主として幼稚園,保育所に焦点をあて,設置者,教職員が負う安全配慮義務の内容について,その動向を抽出する作業を行った。その結果,設置者,教職員の法的責任を左右する要素として,災害発生後の情報収集とそれに基づくリスク評価(危険のアセスメント)をどのように行ったかという点が,大きなファクターとなっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学校保健安全法に関する資料収集が順調に進んでいる。 また,裁判例の分析において,東日本大震災送迎バス事故損害賠償訴訟(日和幼稚園事件)の分析を終え,その成果の一部を公表することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
研究二年目にあたる次年度は,今年度の研究で明らかとなった「災害発生後の情報収集とそれに基づくリスク評価(危険のアセスメント)」の重要性をキー概念として活用し,学校現場において自然災害発生時の責任者となる管理職が有する意識調査を実施する予定である。 また,自然災害に起因する事故に関わる裁判例の収集・分析を,幼稚園,保育所から,小中高等学校に拡大し,裁判法理の抽出を継続していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度途中の2013(平成25)年9月,研究を左右する可能性の高い判決,東日本大震災送迎バス事故損害賠償訴訟(日和幼稚園事件)一審判決が下されたため,その分析に研究時間の多くを費やした。その影響で管理職を中心とする教職員を対象とした意識調査の実施が次年度に持ち越されることになった。繰り越し額の大半は,その関連費用である。 次年度は,持ち越しとなっている教職員を対象とした意識調査を当初よりも規模を拡大して実施する予定である。また,その分析を進め,明らかとなった点を踏まえたヒアリング調査を可能な限り実施することを検討している。
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