研究課題/領域番号 |
25381100
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
清田 夏代 南山大学, 人文学部, 准教授 (70444940)
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研究分担者 |
山崎 智子 福井大学, 高等教育推進センター, 特命助教 (20636550)
石黒 万里子 東京成徳大学, 子ども学部, 准教授 (90510595)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イギリス / 教育ガバナンス / 就学前教育 / 初等中等教育 / 高等教育 / 教育行政 / 政治 |
研究概要 |
就学前教育(石黒):英国の就学前教育の現状について,特に改訂版EYFSに対する教育現場の受け止め方を中心に,2014年3月に実地調査を行った.就学前教育の2施設への訪問調査からは,改訂版EYFSが現場に浸透していることが確認されたが,一方でその就学準備的な性格に対して戸惑いもあることが明らかになった. 初等/中等教育(清田):学校教育のガバナンス形態に焦点をあて,現政権下における地方当局の役割と権限,また政治的立場について明らかにするため,2013年9月に英国での実地調査を行った.現政権の学校ガバナンスの権限配分は,学校の裁量をさらに拡大し,地方当局の関与を減少させようとする意図と方向性をもつものである.それは学校評議会による学校運営の自律性を高め,学校の設立主体を多様化する.また,学校評議会に対しても,課題の検証と見直しが行われようとしていることを明らかにした. 高等教育領域(山崎):政党政治の影響が強く見られる教員養成政策に注目し,先行研究の整理と,英国調査における教育省National College for Teaching and Leadership及びIOEで近年の学校中心/実践ベースの教員養成の理念について,また前政権との政策理念の異動について聞き取りした.保守党/労働党・自由民主党の主要三党は「学校ベース」の実践中心での教員養成の重要性については合意しているが,大学がどのように関わるべきかについては対立している.また,この政策は,アカデミーの強化に代表される義務教育改革と連動するものであることを明らかにした. この研究は,英国の学校教育について,領域を異にする三人の研究者の共同研究として行われている.それぞれの研究について,定期的に研究会を開催し,研究成果の共有,情報交換などを行っている.また,必要に応じ,連携しながら調査活動などを行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度については,概ね順調に進展している. 就学前教育(石黒):英国現地調査や英国人研究者との議論を通し,英国の現状に迫るとともに,レスター大学でのセミナー発表により研究成果を国際的に発信することができた. 初等/中等教育(清田):同科学研究費助成事業の研究代表者として,研究分担者らとの連携協力の体制を整え,研究の進捗状況,次の課題を取りまとめ,進めていくことができた.また,これまでの蓄積の上に英国における地方教育行政と学校ガバナンスをめぐる新たな改革動向や課題について明らかにし,その成果を2013年10月に開催された日本教育行政学会での自由研究報告として発表した. 高等教育(山崎):平成25年度は,現代のイギリス教育改革をめぐる研究の論点整理が主たる目標であったため,おおむね順調にすすんでいるといえる.高等教育の分野では,大学改革そのものよりも,教員養成改革において政党政治の影響が強く見られることが明らかになった.なお,実地調査から明らかになった教員養成政策の課題と特質についてまとめられた論文は,平成26年6月に発刊予定の『福井大学紀要』に掲載される予定である.
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今後の研究の推進方策 |
就学前教育(石黒):対象とする就学前教育施設を拡大し,設置主体ごとの改訂版EYFSに対する見解を明らかにする.この調査を行う施設には,2014年3月に行った現地調査の際に既に研究協力の承諾を得ている. 初等/中等教育(清田):現在英国で提言されている学校評議会制度の見直しの進展状況,また,教員や学校評議員などの見解を具体的に知るための調査を行う予定である.これについて,一部,2013年9月の調査の際に,協力依頼を行っている.また,学校評議員に対する研修について,これを行う複数の施設に聞き取り調査に行くことを予定している.今後,具体的な対象について選定し,適切な時期に協力依頼を行う予定である.この課題についての実地調査は2015年2月を予定している. 高等教育(山崎):平成25年度に得られた論点をより詳細に検討し,現連立政権の教員養成改革の目玉であるteaching schoolsの政策的意図と運用状況を明らかにする.教員養成/採用/研修を包括的に行うteaching schoolsの出現により,教員養成における大学の役割が大きく変わろうとしている.平成26年度は,実地調査(学校見学及び関係者への聞き取り)を通じて,連立政権における教員養成政策の理念を明らかにする,
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に5万円程未使用分が生じたが,当年度に必要な文献,物品は概ね足りたことと,研究2年目は英国での実地調査の旅費その他費用がかさむことが予想されるため,本年度未使用分を次年度に繰り越した。 英国での実地調査旅費その他に使用する.
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