研究課題/領域番号 |
25381100
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
清田 夏代 南山大学, 人文学部, 教授 (70444940)
|
研究分担者 |
山崎 智子 福井大学, 教職大学院, 講師 (20636550)
石黒 万里子 東京成徳大学, 子ども学部, 准教授 (90510595)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 学校ガバナンス / OfSTED / 学校教育 / 教員養成 / 査察 |
研究実績の概要 |
2014年度は,英国における学校教育のガバナンスの重要な主体の一つとして,特にOfsted(教育水準局)に注目した.現在,OfSTEDは非常に重要な影響力を持つに至っている.研究代表者は,これを研究対象とし,日本教育行政学会第49回大会で自由研究報告「英国の学校評議会改革の動向―教育ガバナンスと査察・評価ー」を行い,その後,英国での調査を行った.また,そこでの問題関心に基づき,2月24日に,OfSTEDに対する学校教員の見解について知るために全国教員組合(NUT)を訪れた.また,2月25日にはロンドンにあるOfSTEDのオフィスで継続教育領域責任者兼HMI(勅任視学官)であるスティーブ・スタンリー氏にインタビューすることができた.そこでは2000年代後半のOfSTEDの改組について,また現在のOfSTEDの査察の範囲と理念,立場などについて説明され,査察の当事者の考えや問題意識を知る事ができた. 研究分担者である山崎智子氏(福井大学)は,高等教育領域の担当者として,課題に関するテーマ「英国の教員養成改革における「高度化」と「専門職化」についての一考察」について,日本教育行政学会第49回大会で自由研究報告を行った.また,課題に関する研究成果として「イギリスにおける「学校ベース」の教員養成政策の動向と課題」(『教師教育研究』7,185-192頁)を発表している.山崎氏もまた,2015年2月中旬に英国で研究調査をい,NCTL(National College Teaching Leadership)に対してインタビューを行っている. 平成27年度は,そうしたアカデミーチェーンや教員養成プロバイダーの問題を,OfSTEDとの関係から,さらに探求していく予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度については学校ガバナンスについての成功研究を整理し,それらの到達点と限界,課題を明らかにするという計画のもと,現在の英国の学校ガバナンスの主体としてOfSTEDに注目することの必要性と重要性が浮かび上がってきた.申請時には学校ガバナンスの主体として主に学校運営評議会に注目しており,OfSTEDは問題関心外に置かれていたが,研究を進め,英国の学校ガバナンスの実態を詳細に理解したことによってOfSTEDの影響力が無視できないものであることが明らかになった.そのため,平成26年度においては,実際の調査研究の前にOfSTEDについての先行研究を整理したり,法律や公文書によって沿革を明らかにする作業を行ったが,その過程で,学校ガバナンスにおけるOfSTEDの影響力に注目する研究はほとんどないことが分かった.その意味で,この研究は2000年後半から益々影響力を強めてきたOfSTEDについての最先端かつもっとも正確な研究であるということがいえる. また,OfSTEDは現在,ありとあらゆる機関に対して視察を行うようになっている.それは教員養成にも及び,大学での教員養成から民間のプロバイダーによる教員養成へと比重が変わってきているこの領域においても,OfSTEDは大きな圧力となっている. 平成26年度は,学会と研究調査の日程の関係もあるが,先に研究課題や枠組み,方法等について学会発表が行われ,その後,そこで明らかにされた課題について英国での研究調査が行われた.そこでは,OfSTEDに対するこうした注目に基づいて研究調査の計画を行い,NUTやNCTL,そしてOfSTEDの関係者に直接会い,聞き取り調査を行う事ができた.また,こうした研究調査の上で,平成27年度に行うべき研究の課題も明らかになった. これらに鑑みて,この研究は順調に進んでいるということがいえるであろう.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は,2014年度の研究成果と新たな課題について,学会で報告を行い,それを研究論文としてまとめ,発表することを予定している.さらに,新たに研究対象とすべき課題としてアカデミー・チェーンに注目しているが,まずはそれについて先行研究等を用いて明らかにし,さらにOfSTEDとの緊張関係,OfSTEDのそれに対する批判の正否についての検討,政府や諸政党,NCSLとの関係,学校ガバナンスという観点から見たアカデミー・チェーンの問題などに注目していく.また,研究分担者山崎智子氏は,教員養成制度とOfSTEDとの関係から,教員養成のガバナンス,質保証等についての研究発表を,「英国教員養成のガバナンスに関する予備的考察ーOfSTED,QAA,HEIs―」として,日本教育行政学会第50回で行う計画をしている.それは,大学が関わる教員養成プログラム,教員養成プロバイダーに対するOfSTEDの査察,QAA(高等教育機関としての評価),高等教育機関内部での規則などの視点を用いて行われる.さらに,日本教育学会で,「英国教員養成における大学の位置づけに関する一考察」として,現政権下での学校基盤の養成プログラムやティーチング・スクールの拡大に伴って,大学の役割がどのように変化したか,また,教員養成機関から教員養成プロバイダーへの変化という観点から,各大学の動向に注目した研究発表を行う予定である. 学会での発表準備のための研究から新たに課題を析出し,それについて2016年2月の英国での研究調査を行うことを計画している.その際には,アカデミー・チェーンの関係者や関連する各学校,SCITT,大学などを訪問し聞き取り調査や資料収集を行う.そして,これらの成果について,前述のような集大成と発表を行う予定である.本研究費助成期間終了後も,さらに研究を発展させ深化させていくため,本研究の成果と限界を明らかにし,次なる研究の基礎を構築することを最終年度の目標とする.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が2名いるため,最終年度に1人が使用できる額が非常に少なくなる.最終年度にも英国での調査研究を予定しているため,前年度に特に使う必要がなかった分について最終年度に送り,研究調査の旅費その他諸経費として使用することとした.
|
次年度使用額の使用計画 |
英国での研究調査のための旅費を含む諸経費,その他文具,文献等,必要に応じて使用する.
|