研究課題/領域番号 |
25381114
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
本多 正人 国立教育政策研究所, 教育政策・評価研究部, 総括研究官 (90282623)
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研究分担者 |
青木 栄一 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50370078)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教育政策 / 教育行政 / 教育財政 |
研究概要 |
本年度は、政令指定都市への県費負担教職員の給与負担等に関する事務権限の委譲を含む法律改正案が閣議決定されるなど、政令指定都市を巡る法制度環境及び理論動向に大きな変動があったことから、基礎的データ及び文献の収集・分析に努めた。 まず都市教育政策の財務管理の側面では、20政令指定都市の財務関連規則その他の資料を収集分析し、小・中学校長の予算執行事務に関する諸権限の実際等に関して状況把握を行った。政令指定都市の小・中学校長には、消耗品と備品購入費、施設修繕費のいずれについても30万円までの専決権が与えられている都市が多く(それぞれ12都市、9都市、7都市)、平均すれば消耗品で42.5万円、備品購入費で39万円、施設修繕費で57.5万円となることがわかった。また、政令指定都市のうち消耗品費に関して小・中学校長の専決を認めていない自治体はないが、備品費では2自治体で、施設修繕費では1自治体で学校長の専決が認められていないことがわかった。また学校への予算配当に関して費目間の流用等の学校の予算執行上の裁量を広く認めるしくみを導入している政令指定都市は10都市あること、そのうち8都市では自治体の予算編成手法として部局裁量型の予算制度(包括予算制度)を設けていることがわかった。 員数管理の側面では、教育委員会制度改革の議論に関する新たな展開があったことを踏まえ、教育行政職員の専門性を担保するしくみの実際を明らかにするため、特例市、中核市、政令指定都市、都道府県教育委員会事務局を対象にして「教育委員会における教育行政職員の任用・配置・研修に関する調査」を実施した。平成25年度中に集計結果の整理と分析が終わらなかったため,平成26年度にはこれを集中的に進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度には、政令指定都市の都市内分権、および中核市制度と特例市制度の統合等を提言した地方制度調査会の答申(平成25年6月)や、それを受けた地方自治法等の法律改正案が国会に提出された。また、政令指定都市が県費負担教職員の給与負担者となることが急きょ決まったほか、教育委員会制度のあり方についても制度改正の議論が活発になり、中央教育審議会の答申内容とは異なる法律改正案が国会に提出されるなど、大都市の教育政策の分析枠組みそのものにも再構成を迫られかねない大きな変化が生じた。そのため、参考文献等の収集などを重点的に行ったほか、アンケート調査の対象も都道府県や中核市、特例市にまで広げるなどの対応を行った。データベース作成等に関しても,今後の制度改正の方向性によっては制度改正前後の連続性を考慮に入れつつ入力する事項・項目を選定していく必要が生じたため,その検討作業に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
大都市自治体の教育政策環境条件の整理を行うため、これらのデータ収集及び関連統計資料、書籍類等の購入を引き続き行う。また、法律改正案が成立し大都市制度及び教育委員会制度の改革の方向性が明確になった段階で大都市自治体への訪問調査を充実させ、平成25年度の分析対象とした各種政策の実施およびその管理の在り方に関する進捗状況、政策の目的・政策対象の変容、政策管理手法自体の変化などを細かく把握していく。その際、「教育委員会における教育行政職員の任用・配置・研修に関する調査」の調査結果を活用し、政令指定都市を中心とした大都市自治体の特性の分析等に役立てる予定である。 なお、訪問調査により得られた質的データは一定の方針により整理し、これらを分析可能な形に成型・加工する作業を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
政令指定都市との比較対照群として、都道府県、中核市、特例市についても調査対象とした調査に要した経費の見込みと実支出額との差額が主たる要因である。調査の趣旨は教育行政組織の専門性向上のための実態把握であった。当初想定していた経費よりも安価に調査を実施できたのは、調査時期を同一のものとすることができたことによるものと、電話応対業務等の経費を節減できたことによるものである。 上記のとおり政令指定都市と都道府県、中核市、特例市との調査時期を同一にするために調査時期が年度末となったため、得られたデータの分析に伴う諸経費(主として謝金等)の執行が一部できていない。そこで、次年度はまずこの集計と分析について集中的に予算執行を行う予定である。
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