研究課題/領域番号 |
25381119
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岡本 智周 筑波大学, 人間系, 准教授 (60318863)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歴史教科書 / ナショナリズム / 共生 / 社会統合 / 社会意識 / 歴史教育 / 多文化教育 / 共生社会 |
研究実績の概要 |
本研究は、2010年代の日米の歴史教科書の内容分析を行い、そこにナショナリズムがいかに表現され、共生概念とはどのように関連付けられているのかを探索するものである。また併せて、多文化教育論・多文化社会論の動向の把握と分析、並びにナショナリズムと共生に関する社会意識の探索を行っている。 2014年度は、主として以下の3つの課題を設定して研究活動に取り組んだ。①日本の歴史教科書の収集と内容分析、②アメリカの歴史教科書の内容分析と、多文化教育論・多文化社会論の動向の把握、③共生社会意識を把握するための社会調査の結果の解析。 ①2008-09年の学習指導要領改訂を受けて刷新され、2014年から使用が開始された高校日本史教科書15点を収集・分析した。これらを資料とし、「日本人の起源」「倭国」「天皇と日本」「国風文化の条件」「国民の創出」「四民平等」「学制」「日中共同声明」「村山内閣」「国旗・国歌法」「歴史認識問題」の諸項目についての記述のデータベースを作成し、ウェブサイトにて公開した。その上でこれらの記述を旧版のそれと比較分析し、歴史叙述の更新がもたらす意味を検討した。 ②前年度に入手しデータ化を行った教科書記述の検討を進め、知識内容の時系列的変化を確定した。併せて、アメリカの多文化教育論・多文化社会論の動向に照らした分析を行った。①と②の作業によって、日米の歴史教育について議論される際の主だった論点に関わる情報を確保した。検討作業の成果は、その一部を2014年10月に刊行した共著書『「ゆとり」批判はどうつられたのか』(太郎次郎社エディタス)において発表した。 ③前年度に行った「共生社会に関する調査」「高校生のコミュニティとの関わり合いに関する調査」の分析を進め、それぞれの報告書を発行した。そのなかで共生社会意識とナショナリズムとの関連性、および教育経験がもたらす影響について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
資料の収集、データ化、分析が順調に進行している。2014年度は図書刊行と研究発表の機会に恵まれたため、分析から得られた知見や本研究の方法論についての発表が当初の計画以上に進展した。また共生社会意識調査についても、2014年12月に『共生社会に関する調査――2014年調査報告』(筑波大学人間系研究戦略委員会)を、2015年2月に『高校生のコミュニティとの関わり合いに関する調査――2013-14年調査報告』(筑波大学共生教育社会学研究室)を発行した。
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今後の研究の推進方策 |
「共生が要請される時代のナショナリズム」について考察を深める。2015年度の活動においては、①日本の中学・高校歴史教科書の内容分析の展開、②共生社会意識調査の推進と結果の解析、③研究課題全体に関する総合的な考察 を課題とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料収集のための経費と研究発表のための旅費が所期の想定よりも少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
検討対象である資料の充実と研究発表活動の推進に充てる。
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