本研究の目的は、短大や専門学校などの短期高等教育から職業への移行過程において無業者が発生するメカニズムを明らかにすることにある。短期高等教育においては学校による進路指導のあり方と学生・生徒の進路選択との相互作用の中で問題が発生している可能性が高いと考え、学校側と学生・生徒側の双方の視点に注意を払い問題の構図を描くことを目指している。研究期間3年目の平成27年度は研究期間最終年度であり、短大および専門学校卒業生(2016年3月卒業者含む)に対して進路決定に関するアンケート調査をインターネットにより実施した。実施時期は2016年3月上旬、調査会社に業務を委託し、調査会社が保有しているモニターから短大もしくは専門学校の卒業生を抽出して調査依頼をかけた。回答者数は1327名(専門卒が899名、短大卒が428名)であった。このうち、本研究が関心を寄せる卒業時点での無業者は、回答者全体の17.7%にあたる235名であった。無業者の在学中における行動の特徴の一つとして、担任などの教員と進路に関する話題をあまりしなかったという点が指摘できる。そもそも、短期高等教育における就職活動は、4年制大学のそれと比して学校の関与が大きい。就職決定者のうち6割程度は何らかの学校による支援、たとえば在学中の実習先にそのまま就職したり、あるいは教員および進路指導室による紹介によって初職を見つけたりしている。こうした進路決定メカニズムがある中で、担任とのコミュニケーションがうまくいっていないなど学校による指導に乗れていない場合に、進路決定に至らず無業者になる可能性が高いことが今回の調査によって示唆された。専門学校に限って言えば、この調査結果は昨年度実施した教員聞き取り調査の結果と整合的である。日常的な学校の指導に乗れなかった生徒に対する支援は、担任制度とは別の仕組みを構築する必要があるのかもしれない。
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