研究課題/領域番号 |
25381134
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
竹熊 尚夫 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (10264003)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高大接続 / 留学 / 大学入学資格 / 高校卒業資格 / 国際的接続 |
研究概要 |
9月に実施した中国上海北京での現地調査は、日本語教育を実施する公立高等学校2校と国際バカロレア課程を持つ私立国際高校1校に対して訪問面接を行った。また並行して、中国教育部と私企業である新東方でインタビューを実施した。この他、教科書、教育書籍関係の書店にて、上海、江蘇省無錫、北京で教科別教科書を収集すると共にIB(国際バカロレア)、AP(アメリカ)の中等教育段階の専門テキスト、高考(高校卒業後の試験)に基づく大学のランキングと大学別の選抜点数一覧を分析した文献等を収集した。特に、教科書は物理、数学、化学、思想政治、歴史等を中心に購入し現在、分析作業を行っている。 3月には日本語による大学予備教育課程を持つ、福岡の国際言語学院への訪問面接調査と東京での大学及び留学生受入に関する教育機関への訪問調査を行った。国際言語学院では教育方針、受入方式、教育カリキュラムを聞き取りすると共に、科目別に担当教員から聞き取りを行った。日本学生支援機構の東京日本語教育センターへの訪問調査では、国別受入状況、日本語教育のレベルとカリキュラム、進路状況、機関連携状況を把握し、作成した教科書の共通枠組みに関して各教育担当者からの意見を徴収した。 加えて、日本留学生事業部留学試験課を訪問し、日本留学試験の試験内容、水準等に関する情報収集を行った。この他、国際基督教大学アドミッションズセンターに訪問し、海外の高等教育資格の認定方法について及び大学教育との接続に関するインタビュー調査を実施し、東京大学ではメールでの調査により外国の高校を卒業したものへの入学要件の情報収集を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国現地調査では日本語コースの学校に関する教育制度、進学、日本の大学との連携等に関する情報を得、目的はほぼ達成された。調査では中国の日本語コースを持つ学校が、日本の国立大学進学を希望する一方、日本留学試験等によって、日本の私立大学への直接進学(推薦等)に比べて、1年程遅れるため、国立大学への進学が適切な選択肢となりえないが、昨今、G30関係で高校から直接国立大学へ入学していることも明らかとなり、教科学習履歴を踏まえた日本語教育コース生徒の専門課程への9月入学の可能性が判明した。 一方、日本の私立教養課程大学では、9月に海外学生は日本人学生と同じ方式で受験するが、クリティカルシンキングを重視した入試方法で、かつリベラル・アーツ教育を柱とした一般教育から専攻教育のフローの中で、専攻科目の選定にも柔軟な教育体制をとり、米国式大学教育で比較的容易に留学できる実態が明らかとなった。 従来の正規ルートとしての中国高考(高校卒業後の試験)に基づく海外大学進学は日本語教育機関でも大学受験予備教育段階として、高考の成績が活用されている一方で、成績の低下による、物理、化学、総合科目などの予備教育の必要性、非漢字圏からの留学生の増加に伴い日本語教育の重要性についても情報を集めることができた。 これらの解消には、マクロには現地での日本語教育コースの充実や試験機会の増加、ミクロには個々の高大のカリキュラム相互認定や連携、接続(アーティキュレーション)が必要であり、留学ルートに基づく履修科目と進学後の履修形態のフローが明確となった。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度はオーストラリア調査を中心に、日本国内調査と中国補足調査を継続する。また、教科別・単元別の学習状況・学力判定のための共通枠組を精緻化する。○オーストラリア調査(シドニー、メルボルン:1月)竹熊: 調査全体・大学受入制度の概要把握 朱:受け入れ・審査手続の実態把握 ○日本調査(東京)竹熊:調査全体・大学受け入れ制度の概要把握 史:各大学の受け入れ方針、初年時教育の実態、留学準備教育の実態把握 花井:受け入れ・審査手続の実態把握 ○中国調査(上海:11月:長春・瀋陽は時間的に間に合えば実施)竹熊:調査全体・調査項目・教育課程把握等 史:留学準備教育の実態把握 朱:高校教育課程の実態把握 第2年度では、第1年度で作成した教科別・単元別の学習状況・学力判定のための共通枠組の原版を基に、オーストラリア・日本・英米等学部留学準備教育の実態として、受け入れ側のオーストラリア諸大学での入学審査手続等の状況を明らかにし、海外の国際教育機関および諸大学の本部・学部のアドミッションオフィスにおいて中等教育での教育内容や各教科の学力を如何に認定しているのか、学部教育でどのような点に問題があるのか、学習内容把握のための教育課程の確認手段、学力評定のための試験方法と資料を収集する。同時に、25年度調査で明確になった、高校や大学あるいは私立として存在する接続部分の中等後教育機関の機能をオーストラリアや日本の大学が国際化する際に担う重要な先行事例として留学のフロー図式の中にその役割を明確化し、位置付ける。最後に暫定版の共通枠組みを盛り込んだ中間報告書を作成し、関連教育機関にフィードバックし、意見を収集する。年度後半には研究成果をまとめ、学会等で成果を報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の3月に東京での大学、教育機関調査を行ったため、その差額が生じ、次年度に24067円を繰り越した。 物件費に差額の24,067円を加え、当初の9万円から114,067円とし、内訳は関係図書5万円は変更せず、消耗品4万円の消耗品に差額の24,067円を加え64,067円とし、教科書等の購入費に充当する
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