本研究の目的は学力が低い地域として知られ、また大学進学率が全国最下位である沖縄県の高校生の学力、特に離島の生徒の学力をいかに伸ばすかの手がかりを質問紙調査によるデータ分析を通して明らかにすることである。その際、沖縄本島に位置する進学校(県立普通科)と離島に位置する進学校(県立普通科)を比較する。27年度は追跡調査の3年目であり最終年度であった。 質問紙調査は2015年9月に、本島内の進学校2校372名、離島に位置する進学校2校389名、計761名を対象として実施した。調査項目は学力(学力テストの得点、学校の成績等)、親学歴、希望進路、親の進学期待、家庭学習時間等、多岐にわたる。 データ分析の結果、両者のさまざまな違いが明らかになった。例えば、父親の大卒率であるが、本島の進学校で50.4%と比較的高かったのに対し、離島の進学校では13.1%と非常に低かった。また親の進学期待も本島では大学進学(大学院進学も含む)を期待する率が74.1%であったのに対し、離島では20.2%と大きな差が見られた。そうした環境の違い、特にロールモデルの存在が乏しいことが離島の生徒の学力を押し下げている要因の一つと考えることができる。 ただし離島の生徒の中にも、3年間を通して、高い学力を維持したり大きく伸びたりする者がいる。そうした生徒に注目することによって、離島の学力向上のヒントを得ることができると考え、わずかながら存在するそうした生徒の特徴を概観した。 そうしたところ、いくつかの特徴が明らかになった。例えば、離島の生徒で高い学力を維持(5段階評定の成績が平均4.5以上)している者は、家族に大卒者がいなかったとしても、親戚に大卒者がいれば、その人をロールモデルとして将来設計を考えることができていることがわかった。離島における親戚の結びつきの強さを反映した現象と言える。
|