研究課題/領域番号 |
25381140
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
酒井 朗 大妻女子大学, 教職総合支援センター, 教授 (90211929)
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研究分担者 |
保坂 亨 千葉大学, 教育学部, 教授 (30173579)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生活保護世帯 / 子どもの貧困 / 通信制高校 / 高校中退 / 高校非進学 |
研究概要 |
研究計画に従い、2班に分かれて作業を遂行し、研究会を通じて知見を共有していった。そのうちの1つは、ある自治体の福祉行政の協力のもとに、同自治体に暮らす被保護世帯のケースファイルに基づいて、被保護世帯の子どもの中学卒業後の多様な進路を描こうと試みた。 調査対象者400名弱の進路と基本的属性について分析した結果、以下の諸点が明らかにされた。①対象者の約8割は単親世帯であり、その大半が母子世帯である。母学歴は、高校中退者と中卒が約3割、高卒が4割を占めていた。②高校進学率の平均が98%にも達する中で、調査対象者のうち高校非進学もしくは高校中退者が2割を占めた。また高校非進学から教育機関に改めて戻ることはきわめて難しいことも浮かび上がった。③19歳以上の約150名を対象に集計を行ったところ、調査時点での大学・短大進学率は18%であった。また、これをもとに数名の高校生に対してインタビューを開始した。 この調査と併行して、通信制高校について、高校教育への包摂の観点からその現状を分析した。とくに注目したのは、公立通信制高校と近年急増している私立通信制高校の特徴である。公立通信制高校は服装や生活態度に関する指導は必要最低限に抑えられ、人間関係上のトラブルが起きにくい。ただし、こうした高校では、教員が積極的な支援を必要としている生徒を発見し、支援することが困難であることから、自律的に学習を進められない者が卒業できる見込みが低い。 これに対して、私立通信制高校では学習支援から生活指導に至るまで、積極的な介入によって生徒の学校生活を支援し、卒業まで導く。ただし、積極的な支援や指導が馴染まない成人や非行傾向のある生徒、私立高校の学費を支払うことが難しい生徒は、入学の段階で排除されている点に留意が必要である。以上のように通信制高校には大きく2つのタイプがあり、それぞれの機能の異なることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画にそって2班に分かれてそれぞれの課題を追求しているが全体的に進行がやや遅れている。平成26年度にはその分を挽回して調査にあたる予定である。 生活保護世帯の調査はまだ全体の概要を精査する作業が長引き、中退者に対するインタビューについてが遅れてしまった。その点で課題が見られる。 学校内で生徒が退学に至る過程に関する事例調査については資料の収集は行ってきているが、収集したデータが多かったために、まとまった分析には至ることができなかったため、次年度に作業が持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って高校中退者のインタビューを精力的にすすめるとともに、事例調査については収集したデータを分析し知見をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
学校内で生徒が退学に至る過程に関する事例調査においてはデータは収集しているが、それを分析するまでに至っていない。計画ではこの分析において謝金やその他の予算を用いる予定であったがそれが使われずに次年度送りになっている。 平成26年度は研究実施計画に記載した分と平成25年度に達成できなかった課題について研究を精力的に進めていく。具体的には高校中退者に対するインタビュー調査は対象者を選定して順次聞き取りを行っていく。 また、学校内で生徒が退学に至る過程に関する事例調査についてはすでに収集したデータの分析を行うとともに他の事例に関するデータを収集し分析を進めていく。
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