研究課題/領域番号 |
25381140
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
酒井 朗 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (90211929)
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研究分担者 |
保坂 亨 千葉大学, 教育学部, 教授 (30173579)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高校中退 / 通信制高校 / 教育困難校 / 生徒就学支援センター |
研究実績の概要 |
研究実施計画に従い、各班に分かれて作業を行った。 酒井班では、沖縄県における高校中退問題への取り組みに関する研究を進めた。同県では、中退対策として、各高校の指導体制の見直しや中途退学対策委員会の設置などを進めてきたこと、また、高等学校生徒就学支援センターの取り組みが、中退のリスクの高い生徒に対し、自らの進路や将来をじっくり考えるための時間を提供することを可能にしたことなどを明らかにした。 保坂班では、千葉県で入試偏差値の低い「教育困難校」を辞めていった生徒の実態を明らかにした。その割合は中退に関する公式統計もはるかに多いこと、経済的困難につながる事情の多さなどが浮かび上がった。しかしながら、担任教諭は生徒の問題を「意欲不足」として理解する傾向があることも明らかにされた。 これらの実証研究と並行して、社会的排除論からこの問題を位置づけする作業を進めるとともに、2000年以降の中退者の減少について、高校教育に規制緩和にともない急速に拡大した私立通信制高校の役割が大きいことに注目し、中退リスクの高い生徒の包摂への貢献とそこに潜む課題について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)高校中退の定義と統計に関する批判的検討、(2)学校内で生徒が退学に至る過程に関する学校調査、(3)中退に至る過程と中退後のキャリアパスに関する生徒調査、(4)社会的排除の観点から見た中退問題の理論的考察、(社会的包摂に向けた中退問題に対する支援対応策の検討、の5点について検討を進めることとしているが、昨年度に引き続き、これらの5点に関して調査研究を進めており、多くの知見を見出してきた。このため上記のような評価を下した。
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今後の研究の推進方策 |
事業期間の延長が認可されたことにより、今年度まで研究を継続することになった。 今年度は、これまでの研究で得られた成果について、中国で開催される国際フォーラムで発表する予定である。この発表に向けて、研究成果のうち、とくに2000年以降の中退者の減少において、私立通信制高校が果たした役割について分析する。ここから、日本における高校教育への生徒の包摂が、民間主導でなされてきたことを指摘するとともに、そのことがどのような意義と課題を持つものかについて考察する予定である。 さらに、最終年度として研究を総括し、報告書をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業期間延長延長申請承認書に記載した通り、次年度に中国の北京師範大学と北京語言大学共催の国際フォーラムにおいて研究成果報告の機会を得たため。また、この報告を含めて、研究全体のとりまとめを行うため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、中国での国際フォーラムでの発表に要する旅費や原稿の英文添削料などの費用、ならびに研究成果をとりまとめ冊子にするための印刷代に充てる。
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