研究課題
本研究の目的は、大学における自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:以下ASDと略)の「問題状況」およびASDへの支援体制の状況を明らかにすると同時に、ASDに対する支援体制モデルを構築することである。そのために3つの課題を設定した。2015年度の研究活動は次の通りである。課題1の大学でのASDの問題状況と支援体制の現状把握については、昨年度進まなかった大学関係者への聞き取り調査を進めると同時に、大学の支援体制に関する資料や文献を収集し整理を行った。課題2のASDをめぐる事例検討については、引き続き代表者の所属学科の中で、ASDもしくはASDと思われる学生についての事例検討会を行い、これまでの事例も含めて整理を行った。第3の課題であるASDに対する高大接続の現状と課題を解明することについては、昨年度までに実施した調査票調査の結果を基に分析を進めた。以上の3つの課題に取り組むことで得た知見をまとめると次の通りである。(1)他大学の支援体制をそのまま移行しただけでは有効な支援体制の構築は望めないこと、(2)組織の特徴(どのような高校から学生を受け入れているかなど)が類似していれば、共通の課題を抽出し、各大学が抱える課題の共通点を捉えることができること、(3)大学がASD学生を円滑に受け入れることができない要因は利用可能な資源の制約と教職員の多忙化であること、(4)高校における発達障害生徒の大学進学について、進路多様校では推薦入試を利用した「問題の先送り」が常態化していること。特に、高校における「先送り」の問題は学生募集に困難を抱えている大学にとっては深刻な問題である。大学における自閉症スペクトラム支援体制モデル構築においては、当該大学の特徴を踏まえた上で、高大接続の方法を検討することがポイントとなることが導かれた。
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月刊高校教育
巻: 第49巻第7号 ページ: 38-41
Front. Psychiatry
巻: 7
10.3389/fpsyt.2016.00002