本研究は、政治と教育の関係性を文教関係議員の動きに着目しつつ検討するものである。本課題の特色の一つである「文部大臣経験者へのインタビュー調査」によって、以下のことが解明・示唆された。第一に、部会の重要性である。自民党では1年生議員に希望部会のアンケート調査を実施し、各自の専門を決める。委員会の委員になることも重要だが、族議員的な動きになるのはやはり部会だった。。部会の有力者は若手の発言に注目しながら有望株にチャンスを与えるとのことであった。 第二に、官僚との関係構築についてである。部会内で力を持っていくには部会長、あるいはせいぜい副部会長という立場になり、こうして部会の中のインナーの会議に出席していくことで、官僚とのつながりが強くなってくるというプロセスが確認された。 第三に、「誰を文部大臣にするか」に関して、文教族の有力者の影響力が示唆された。ある文相経験者は文教の専門家ではなかったが、文相に就任過程で有力者の推薦があったかもしれない、と回答している。就任後は文教族方面から反発を受けたりすることもなかった。 第四に、教育基本法改正に関してである。「改正の気運」は文教族が高めたのかもしれないが、改正作業の過程においては彼らはそれほど大きな役割を果たしていたわけではなかった。「与党教育基本法に関する検討会」には文教族の影響力はあまりなく、むしろ公明党とどう折り合いをつけるかにおいて、大島理森氏が粘り強く作業したとのことであった。 インタビュー調査により、通説の確認ができ、また別の視点から検討が必要な事柄を浮き彫りにすることができた。
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