研究課題/領域番号 |
25381159
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
宮川 洋一 岩手大学, 教育学部, 准教授 (70552610)
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研究分担者 |
市原 靖士 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (20572837)
森山 潤 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (40303482)
島田 和典 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (50465861)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 情報モラル / 情報セキュリティ / 安心・安全の確保 / ESSシステム思考 |
研究実績の概要 |
本研究では,「情報システムと人間と共生,協働する社会」において必要となるコンピテンシーの一つ「ESSシステム思考の形成」を図るための中核となる思考概念)について,その構成概念と構造とを明らかにした上で,タブレット端末を加えた教材の開発,学習フレームの開発(題材開発),教育実践・評価を行うことを通して,学習者の「ESSシステム思考」を形成しうる学習指導の構築を目的としてきた。 H26年度には,これまでの実践を科学的に検証して研究成果を論文としてまとめたり,学習者のメタ認知と情報モラルに対する意識との関連に着目した基礎的知見を得たりし,本研究課題の取り組みを推進してきた。また,SNSに関する実践を中学生に実施し,データを基にこの実践の効果についても学会で発表した。以下,一例を簡単に報告する。 パスワードはユーザー認証の最も普及した方法である。特に,パスワードの定期的な変更は,安全・安心という観点から重要な事柄である。このことは,義務教育の段階から繰り返して指導していく内容である。本年度は,これまで行ってきた実践について,宮川・森山(2011)が作成した「情報モラルに対する意識尺度」(3因子・詳細6因子・20項目)を用いて,その効果を科学的に検証した。その結果,「ネットワークの仕組みと個人認証」という主題で取り組んだ4時間扱いの題材(取り上げた教材も含む)は,情報社会におしてICTを活用する際の危険回避に対する意識を高める効果があることが示唆された。また, IPアドレス等,情報伝達の仕組みを理解させることにより,情報モラルについて直接扱わなくても,特定の情報モラルに対する意識の向上が見られるという実践的な知見を得ることができた。これらの知見は,8月に行われる岩手県教育委員会主催「授業力向上研修」にて講義し,学校現場の先生方へ還元していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度には,先に述べた研究成果のまとめと並行して,近年トラブルが相次ぐSNSに着目し,タブレット端末を活用してSNSの疑似体験を盛り込んだ実践的・体験的な情報モラル教育の実践を行い,その効果について検討した。3時間扱いの題材を設定し,展開の前後における,生徒の「安心・安全の確保」に対する意識の高まりを把握するため,宮川・森山が作成した「情報モラルに対する意識尺度」(3因子・詳細6因子・20項目)を用いた。また,題材展開終了後には,本題材への取り組みに関する自己評価を,自由記述形式で実施した。その結果,すべての因子(3因子・詳細6因子)において有意差が認められた。この結果と生徒の自由記述の内容から,開発した題材(3時間扱い)及び実践した疑似SNSとタブレットを用いた実践は,生徒の「安心・安全の確保」に対する意識を高めることに効果があると示唆された。 このように,ESSシステム思考を形成しうる授業実践が確認でき,一般化への道筋ができつつある。このことを踏まえ,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,これまで行ってきた基礎的知見を得るための研究と実践的な研究の取り組みから得られた知見を論文化するとともに,多くの教育研究者や教育実践者へ還元していく取り組みを強化する。また,一連の研究から得られた知見を統合して,ESSシステム思考を醸成しうる実践の一般的なモデルを導きだす等,さらに研究を推進していく予定である。 最終年度となる本年度は,本研究課題が3年前までの前研究課題と対をなし,新たな研究課題の土台となっていることに鑑み,次なる研究課題を見据えた取り組みとしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額が生じた」額の予算は,研究分担者が予定していた海外学会参加に係る費用であった。H27年1月3日から香港で開催された学会への参加が,研究分担者のやむを得ない事情によりキャンセルとなったために発生したものである。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度,諸事情で見送られた旅費に係る予算については,研究分担者が本年度末3月に米国で開催されるITEEAへの参加(研究成果の発表)を計画しており,本年度の経費と合算して執行される予定である。
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