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2013 年度 実施状況報告書

ワークショップ型社会科における授業構成ストラテジーの開発的研究

研究課題

研究課題/領域番号 25381162
研究種目

基盤研究(C)

研究機関山形大学

研究代表者

江間 史明  山形大学, 大学院教育実践研究科, 教授 (20232978)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード教育学 / 社会科教育 / ワークショップ / カリキュラム / 教材開発
研究概要

平成25年度の研究実績は、次の4点である。
第1に、「熟考」及び「説得」の対話モデルにもとづく単元の開発である。「熟考」タイプの対話は、ある実践的選択のジレンマ状況から出発し、行為の優先度について実践的合意を目指すものである。今年度は、ランキングを位置づけた「これからの食料生産ーこれからの米作りのあり方を考える」(山形大学附属小5年、西長大教諭)を開発した。「説得」タイプの対話は、意見の対立状況から出発し、他方を説得し自己の意見を優勢にすることを目指すものである。日本の農業を主題に、「農家緊急家族会議ー弟を説得せよー」(中3公民、山形大学附属中、関東朋之教諭)を開発した。これらの授業は、日本社会科教育学会第63回全国研究大会(山形大会)の関連行事として公開し、研究協議を行った
第2に、対話モデルに関わる教育内容研究である。「説得」の対話モデル(ディベート)が「民主主義」理解にどう関わるかを、学級会の話合い活動を事例に分析した。分析の結果、合意調達を優先する「民主主義」と可謬主義的な「民主主義」という2つのモデルを析出した。この内容は、日本カリキュラム学会第24回大会の課題研究で発表した。
第3に、ワークショップ型の活動空間の設計を検討するために学校訪問調査を実施した、富山市立堀川小学校、諏訪市立高島小学校である。学習者に適度な大きさの活動(思考)空間を設計する点や、ふり返りと相互作用のスキルを学習者に学ばせる点ついて、有益な示唆を得た。今後の継続的な調査が必要である。
第4に、平成25年度末に、上條晴夫氏(東北福祉大)を招請して、今年度の授業開発についての研究会を実施した。開発単元の検討と同時に、授業構成ストラテジーを構成する上での教師のリフレクションの機能について、協議を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は2つある。第1に、学習科学のひとつである「対話理論」と協同学習の手法を用いてワークショップ型社会科授業論の発展をはかること。第2に、その成果を統合して、個々の教員がワークショップ型授業を開発し運営する際の「指針と手立て」(これを「授業構成ストラテジー」とよぶ)を明らかにすることである。
第1の点について。「対話理論」のうち、「熟考」及び「説得」タイプの単元開発と、「説得」タイプに関わる教育内容開発を進めることができた。協同学習の手法については、ワークショップの活動(思考)空間を安定させるための、相互作用や「ふり返り」の言語技術の検討を進めた。他方、25年度に予定していた「対話理論」の「探究」モデルの単元開発は、26年度に引き継ぐことになった。
第2の点について。ワークショップ型の「授業構成ストラテジー」を明確化していくために教師のリフレクションを促進し、授業者と研究者の対話のなかで明らかにしていく方法が明らかになった。25年度は、単元開発は進めたが、単元開発のプロセスにおける教員の意思決定から「授業構成ストラテジー」を析出することは十分にできなかった。この共同リフレクションの方法を、実際の単元開発のプロセスで実施するのが、26年度の課題である。

今後の研究の推進方策

26年度は、次の3点にわたって研究をすすめる。
第1に、「対話理論」にもとづく単元開発である。26年度は、「交渉」と「探究」タイプに焦点をあてる。「探究」タイプについては、「あの戦争(①941-45)はどこでとめられたか」として、戦争回避不能点を歴史の流れの中から区分する活動を考えている。「交渉」タイプは、「エネルギー供給における合意形成」として、原子力発電を含むエネルギーの安定供給の「折り合い」をロールプレイで考える活動を考えている。実験授業は、山形大附属小及び附属中で予定している。単元の進行にあわせて、WEB上で研究協力者同士が授業の検討ができるように、Wi-fi機能を有するビデオカメラを導入する。
第2に、「授業構成ストラテジー」の析出である。ワークショップ型授業を開発した経験をもつ教員(研究協力者)との共同リフレクションの対話を、実験授業後に行う。活動(思考)空間の設計に関した迷った点や実際の決定理由などがテーマである(その他には、活動要素の選択、導入した協同学習の手法、学習者の思考の想定、ふり返りの指導言、等である)。学習科学および質的研究に関する図書を整備し、検討を加える。
第3に、学校調査と研究成果発表である。25年度に訪問調査した学校を中心に、活動空間の設計に関わる授業実践を継続的に調査する。研究成果については、日本社会科教育学会(静岡大学)及び全国社会科教育学会(愛媛大学)で発表する。26年度末には、研究報告とその検討会を、山形大学で実施する。

次年度の研究費の使用計画

25年度の単元開発において、WEB上で授業を検討できるビデオカメラ等の導入を行わなかったため。これは、25年度は日本社会科教育学会山形大会での関連行事として、今年度の開発単元の授業を公開する特別な事情があったためである。このため、学会準備にむけた期間に研究協力者が実際に授業を参観して検討を加えたり、全国から研究者や実践者が、実際に授業を参観する機会を得られたということによる。
研究計画の第1と2で述べたように、「対話理論」にもとづく単元開発において、授業の事実を、単元の進行にあわせて、WEB上で研究協力者同士が共有できるように、ビデオカメラ等を導入整備する。これにより、「授業構成ストラテジー」に関する知見を析出するための資料を得られるようにする。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 議論による民主主義と教育ー小学校・特別活動の学級活動からの考察ー2013

    • 著者名/発表者名
      江間史明
    • 学会等名
      日本カリキュラム学会
    • 発表場所
      上越教育大学
    • 年月日
      20130706-20130707
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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