研究課題/領域番号 |
25381168
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
本村 猛能 群馬大学, 教育学部, 教授 (70239581)
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研究分担者 |
森山 潤 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (40303482)
角 和博 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (80145177)
山本 利一 埼玉大学, 教育学部, 教授 (80334142)
工藤 雄司 茨城大学, 教育学部, 教授 (70635614)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 情報教育 / カリキュラム / 情報活用能力 / 情報の科学的理解 / 情報活用の実践力 / 情報社会に参画する態度 / 比較研究 |
研究概要 |
本研究は,日本と同じアジア圏の韓国・中国が『小学校から高校の一連の情報教育により児童・生徒の認知的能力や科学的理解が充実している』という平成24年度までの我々の先行研究を踏まえ,両国および両国と異なる文化圏(西洋,米国)の調査と比較検討し,体系的情報教育のカリキュラム開発と具体的な情報教育の指導方法を提案することを目的とした。 本研究の3年間の計画の中では,『各学校段階に応じた指導方法の提案がされ,学習者の意欲と知識を融合した,質の高い情報教育の体系化が導き出せる』ことを前提として,ブルームの「認知領域・精神運動領域・情意領域」と,ペレグリーノの「認知」「観察」「解釈」の理論を踏まえ調査・分析を進めている。 ここで本研究の初年度である平成25年度は,これまで日本・韓国・中国の中学・高校生(以下中高生とする)を対象に,情報教育の学習過程での生徒の「自己評価による意識調査」の診断を通して,職業意識とICTとの関わり,我が国の中学・高校情報教育のカリキュラム上の情報に関する用語の認知度について比較検討した。 その結果,情報教育における「情報活用の実践力」の習得,「情報社会に参画する態度」の形成に対する習得意欲では,いずれも日本の中高生の平均値が最も高くなった。しかし,日本の中高生は,「情報の科学的理解」に対する志向性が他の2観点に比べて相対的に低く,情報関連用語に対する認知度も韓国・中国に比べて最も低かった。これらのことから,我が国の情報教育は,韓国や中国に比べて教育課程上の位置づけが弱いため,中高生の意欲は高いものの,情報関連用語の認知形成を十分に達成できていない実態が明らかになった。 我が国は,各学校段階での情報教育のカリキュラムとして基礎的・基本的な知識の習得をはかり学校段階に応じた教授法の体系化を充分検討する必要性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は我が国の情報教育の体系化を目指す上で必要と思われる中高生の情報教育の実態を知るため,生徒の情報教育に関する意識や認知度について調査した。 その結果,情報教育における「情報活用の実践力」の習得,「情報社会に参画する態度」の形成に対する習得意欲では,いずれも日本の中高生の平均値が最も高くなった。しかし,日本の中高生は,「情報の科学的理解」に対する志向性が他の2観点に比べて相対的に低く,情報関連用語に対する認知度も韓国・中国に比べて最も低かった。これらのことから,我が国の情報教育は,韓国や中国に比べて教育課程上の位置づけが弱いため,中高生の意欲は高いものの,情報関連用語の認知形成を十分に達成できていない実態が明らかになった。 これらの分析結果を韓国と中国の中高生と比較すると,学習の理解度を高めるためには,情報教育に関する基礎・基本的な知識の習得とそのための意欲が重要であり,中学校から高等学校までの体系的な学習内容の積み上げが生徒の学力の向上にとって重要な要素であることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(平成25年度)の情報教育に関する調査は,本研究目的を達成するために従来の情報教育の調査内容について確認と検証を行った。そこでは,我が国の中高生と中国と韓国の中高生についての調査研究であった。この調査より,明らかに我が国の中高生の情報教育に対する認知度や意欲については顕著な結果が現れたが,この調査をもって各国の情報教育の様子の全てを明確に示すとは言い難い。また,より多様なカリキュラム評価の観点の必要性である。本研究では,情報活用能力に対する習得意欲と情報関連用語の認知度を分析の観点とし,国際比較調査を実施した。しかし,情報教育のカリキュラムを俯瞰的に評価していくためには,より多様な観点からのデータの収集が必要である。 この点において,情報教育のカリキュラムに対するイメージ調査も同様にして実施していく必要があると考えられる。このような多様な観点からの評価資料の蓄積を経て,日本の情報教育のあり方について総合的に検討していくことが重要と思われる。さらには,韓国・中国だけでなく,その他のアジア諸国や文化圏の異なるヨーロッパ,アメリカ等の各地域を対象とした国際比較調査の推進が必要であることが判った。 次年度(平成26年度)からは小学校から高等学校の一連の情報教育のカリキュラムについて,各国共に学習内容の改訂もあり,特に我が国も平成23年度以降順次小・中・高校において大幅に情報教育の学習内容も改訂されているので,この点について再検討し,ブルーム評価理論の「精神運動,認知,情意」の各領域と包含される「技能,知識・理解,態度」を,ペレグリーノの評価理論の3つの目標と理論的な評価の枠組み,なかでも「観察」での適切な教材により小・中・高連携した情報教育の実践を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年平成25年度は,これまでの先行研究,すなわち日本と韓国,中国における情報教育の実態の調査とカリキュラムについて検討した内容について,中国,韓国の中高生に対し追調査を計画し,情報教育に関する意識調査を,再度実際に以前調査した当該地域を訪問する予定であった。 しかしながら,年度当初から何度か連絡を取っていたが,昨年度特に国家間の緊張が続き,現地の中学,高校,そして教育委員会へ訪問することは控えた方が良いとの相手からの連絡を受け,訪問することが出来ず,その分の旅費等を繰り越すことになった。 本年平成26年度は,昨年訪問できなかった中国・韓国について留学生あるいは国際交流の大学になっているところと連携を密にして相手大学,教育委員会の先生方と連絡調整を取り,昨年度実施できなかった訪問を我が国へ留学している学生等と連携し調査予定である。 これにより,我が国情報教育の新しいカリキュラム内容を軸として比較研究予定であり,また同時に,予定されているヨーロッパやアメリカについても同様の調査を実施し,比較調査に必要な相手国のカリキュラム,教員意識,政府体制を検討し,情報に関する教材を相手国の学校教員に紹介し,実践計画を行う予定である。
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