研究課題/領域番号 |
25381172
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
和田 一郎 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (70584217)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メタ認知 / 協同的学習 / 自律的学習 / 科学概念構築 |
研究概要 |
近年,子どもの自律的な思考・表現を育成するための教授方略の確立が急務となっている。本研究では,子どもの思考過程で稼働する表象(脳内におけるイメージや数式などの表現活動)に着目し,子どもが協同的な学習を通じてこれを自律的に操作できるような理科授業システムの開発を目指している。 研究初年度では,まず自律的な学習の具現化に関わる要素としてメタ認知に着目し,これの協同的な学習を通じての変容過程を分析した。具体的には,Anastasia,E.(2009)が提起する個人のメタ認知に対する社会的レベルの影響を考慮したメタ認知の多面的モデルに着目し,これを理科学習の立場から捉え直した。その上で,Khan,S.(2008)の提起する理科における協同学習を通じたモデル構築プロセスに関する理論を援用して,社会的相互作用の活性化を通じたメタ認知の機能拡充のための教授論的視点を構想した。 結果として,まず課題解決に関わる自分なりのモデル構築を実施することで,既有の表象ネットワークを稼働させた個人内部でのメタ認知の活性化が観られた。その上で,協同的な学習による課題解決を通じたメタ認知の相対化の過程の成立によって,子どもは表象ネットワークの修正や再構成を行い,メタ認知的モニタリングとコントロールの質を高めていることが明らかとなった。協同的なモデル構築過程では,教師による的確なモデル評価を通じた足場作りが不可欠であった。 これら社会的な相互作用とメタ認知の変容との関連を表象ネットワークモデルと対応付けて分析することによって,子どもの自律的な科学概念構築過程の一部を明らかにすることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度では,協同的なメタ認知の内実を表象ネットワークモデルを援用することによって,その情報処理過程を明らかにすることができた。特に,Anastasia,E.(2009)が提起するメタ認知の多面的モデルを導入により,これまで不明瞭であった社会的な相互作用によるメタ認知の変容過程を理論的に説明することが可能となった。その上で,協同的な学習を促進する教授方略を構築し,授業実践を通じてその有効性を検証することできた。
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今後の研究の推進方策 |
社会的な相互作用を通じたメタ認知の活性化に関わり,今後の研究では表象の移行過程への影響をより詳細に検討する予定である。具体的には,表象には活動的表象,映像的表象,記号的表象の3タイプがあるが,これらの相互連関過程に対するメタ認知の機能について明らかにする。これによって,協同的な学習を通じた自律的な思考・表現の内実,ならびにその活性化のための方略を導出することができると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定した人件費の支出が生じなかったことによる。 授業記録のアシスタントに関わり,人件費が発生する可能性があるため,これに充当する予定である。
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