研究実績の概要 |
本研究では,協同的学習を通じた子どもの自律的な思考・表現を深化させる理科授業デザインについて検討した。具体的には,自律的な思考・表現を具体化するための中心機能としてメタ認知に着目し,その個人内部での情報処理過程を精査することに加え,教師や他者との相互作用の影響を考慮した。そこでは,学習論としてEfklides,A(2009)の主張するメタ認知の多面的アプローチに関する理論を援用し,理科授業における社会的相互作用過程を通じたメタ認知の変容過程について理論化した。加えて,Kahn,S(2007)が提起する理科における協同的なモデル構築に関する教授方略に着目した。これらの諸理論を踏まえ,小中学校および高等学校における理科授業実践の分析を通じて,具体的な授業デザインの要素の抽出を行った。 結果として,予想や仮説の設定場面において,既習事項や日常経験に基づき,それを具体的に表現させることによって,特にメタ認知的活動におけるモニタリング過程の活性化が見られた。また考察場面では,実験結果に関する情報のモニタリング結果に基づき,子どもが解決が困難な事項と判断した場合,他者の認知やメタ認知の情報のモニタリングを促すことによって,自己のメタ認知の内容を俯瞰し,より高次な認知処理過程が生起することが明らかとなった。この中で,子どもは自分なりのモデルの構築,その修正や再構築が促され,自ら主体的に思考・表現する活動を促進させた。
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