本研究の目的は、スパイラルを重視した数学的活動による中高連携の代数カリキュラムを開発し、そのカリキュラムによる学習効果を考察することである。この目的の達成に向けて、平成28年度はスパイラルを重視した数学的活動による、単元「正の数・負の数」、単元「数列の極限」、単元「積分」を開発し、それぞれのカリキュラムによる学習効果を、質的な研究方法に基づいて考察した。ここで、単元「正の数・負の数」のカリキュラムは、27年度に開発した単元「複素数平面」とのつながりを意図して設計した。生徒にとっては、ともに「数の拡張」の学習となる。例えば、正負の数の乗法では2本の数直線を用いて被乗数を1とみる解釈を繰り返し行うこと、複素数の乗法では直角三角形のモデルを用いた操作とその対象化を通して解釈を行うことが、各々の授業で実践されている。この活動は、数の乗法構造を体系的に理解するために重要な役割を果たしている。28年度に実践された単元「正の数・負の数」では、「拡張された数の世界から情報の意味解釈を見直すことにより、乗法では被乗数を1とみることが重要な役割を果たすことを実感し、統合的な見方を高めることができる」や「2本の数直線を用いた操作活動を通して、無限概念に繋がる洞察を行うことができる」等の、生徒の動きが特定されている。 また、単元「数列の極限」の授業分析からは、「異なる視点からの考察の過程をふりかえり、関連づけることを通して、数列の極限を調べる方法を思考の対象とすることが促される」や「同じ数に接近する複数の有理数列や漸化式の比較から、その背景にある原理に迫ったり、数列の接近(収束)に関する本質的な「問い」が生成される」等の、生徒の思考や動きが特定されている。
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