本研究の目的は、中学校社会科歴史的分野における世界史内容がいかなる意味と課題を持ったものであるかを歴史的に解明することにある。そのため、中学校社会科の発足時から現在までの学習指導要領、教科書、教育理論、授業実践等を対象として、その中の世界史に関わる内容の形成、発展、変容、現状等を分析することで、中学校社会科歴史的分野における世界史内容の意味と課題を明らかにすることを目指している。 研究3年目である2015年度においては、中学校社会科歴史的分野の世界史内容に関わる各種資料の収集と分析を引き続き実施した。その際、その世界史内容がいかなる性格をもつものであるのかの検討を、その当時における高校社会科の世界史教育の実情から照らし出すことで推し進めることにも努めた。また、戦後の中学校社会科での歴史教育を担ってきた人物への聞き取り調査を継続した。 その結果、1955年前後からの中学校社会科歴史的分野の出発点における自国史と世界史の教育に対する模索が教科書の構成や授業実践において進められており、そこには今日の内容構成とは異なる様々な試みが含まれていること、義務教育である中学教育での在るべき世界史内容が自国史や自分の地域史の教育を含めて中学生の生活から構想されていたこと、一方で中学校社会科での世界史内容には、1950~60年代の当時の高校世界史教育が持つ課題や取り組みが反映されている側面と高校世界史とは別個の追究がなされた側面が存在すること、などが確認された。加えて、歴史教育の歴史的研究の中でも世界史教育については種々の理由によりいくつかの課題を抱えており、その解決が不可欠である点も提示した。
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