本年度は、理論的研究として、授業研究における教師知識に関する理論を援用し、教師の有する知識を分析する方法についての検討を行った。また、実証的研究として、家庭科教育における食物領域とホームプロジェクトに関して調査及び授業実践を行った。 まず、日本の授業研究は、必ずしも理論化されていないため、知識に関するDidactic Transposition Theoryの授業研究における適用について検討した。その結果、授業研究の準備段階である教材研究・開発、学習指導案の作成においてその適用が可能であることが示唆された。 次に、家庭科教育の食物領域における調査と授業実践研究及びホームプロジェクトの調査を行った。それぞれの調査は、大学生を対象にした食生活に関する意識調査である。その結果、小学校で栄養素、中学校で1日に必要な食品郡別摂取量を学んでいるにもかかわらず、大学生においても食品群別摂取量が十分に理解できていないこと、また、女子学生は栄養バランスは理解できていても、実際にそのような食生活を必ずしも行っていないこと、などが明らかとなった。特に、なぜ食事をするのか、といった小学校家庭科の食物領域の目標や基本的な学習内容が理解できていない実態が浮き彫りとなった。他方、ホームプロジェクトに関しては、高校で必修であるにもかかわらず、学生はその意義を理解しておらず、実施した記憶は少なかった。そのため、家庭科教育で生活の課題解決学習を行う目的及びその指導法を教員養成教育においてより意識化させて教育を行う必要性が明らかとなった。 中学生を対象にした実践研究では、よりよい生活を目指した実践的な意欲と態度を育むことを目的として、弁当調理の工夫を考えるアクティブ・ラーニングを取り入れた授業実践を行った。その結果、日常生活の課題解決活動を効果的に行う方法の示唆が得られた。
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