最終年度では、小学校及び中学校の家庭科を担当する若手教師と熟練教師の教師知識の実態について、小学校の教師と中学校の家庭科教師のそれぞれについて、面接調査を中心にして分析を行った。その結果、小学校及び中学校において家庭科の授業を担当する熟練教師は、若手教師と比較して教師知識の量も多いこと、自覚的・無自覚的に培ってきた実践知を有しており、それ故に複合的な知識であるPCK(教材化の知識)を、教職経験を通じて発達させ、子供の学びや多様な文脈に適合することが可能であること、などが明らかとなった。つまり、教員養成段階におけるPCKの育成をどのように担保するかが今後の課題であることを指摘した。 戦後の小学校から高等学校までの家庭科の調理実習に関する内容の変遷を明らかにした。その結果、時代を反映しながら、調理実習の内容が変容していることが明らかとなった。 この分析結果を踏まえ、中学校を対象にして、今年度は「食生活と自立」に関する内容の教材開発及び授業実践を行った。特に、地域の食文化をテーマにした教材の開発、アクティブ・ラーニングを取り入れた学習の教材開発と実践を行った。後者のアクティブ・ラーニングを取り入れた教材開発では、生徒自らが課題について主体的に考え、グループによる協働的学習を設定し、よりよい弁当とは何か、という課題設定をして、創意工夫で弁当を作成した。その結果、実感を伴った理解の向上、目的に合った工夫を協働で行う能力の向上などが明らかとなった。
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