研究課題/領域番号 |
25381188
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
渡辺 哲男 立教大学, 文学部, 准教授 (40440086)
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研究分担者 |
牧戸 章 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (40190334)
山名 淳 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (80240050)
柴山 英樹 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (60439007)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 言語活動 / ミュージアム / 近代教育 / ことばとモノ |
研究概要 |
2013年度は、「言語活動」あるいは「言語活動の充実」の意味内実を探るための理論的研究に傾注した。この過程で本研究メンバーに共有された問題は、「言語活動」そのものよりもむしろ、それを誘発する、いわば環境的要因であった。「言語活動の充実」というと、授業中に話し合い活動の回数を増やすなどの、学習者同士の交流活動の増加が想起されるのだが、私たちの研究では、「充実」のための工夫を考えるのではなく、そうした活動を生起せる「モノの力」に注目したのである。 そのとき、私たちが研究対象として具体的に着目したのは「ミュージアム」である。たとえば、実際に研究分担者が経験したことだが、ある博物館で古墳の展示があり、祖父母と孫のミイラが展示されていた。詳しいキャプションはなく、それをみた児童が自分の祖父母の話をし始め、祖父母のことを互いに話して交流するという営為が起こった。これは、展示物という「モノ」の力によって「言語活動」が誘発されたということになるだろう。私たちは、こうした「言語活動」を誘発する場として「ミュージアム」を捉えることの可能性を、2013年10月に全国大学国語教育学会のラウンドテーブルにおいて、「ミュージアムで国語教育:ことばとモノの関係を考える・その1」において論じた。 他方で、「ミュージアム」というのは、キャプションという文字に溢れた場でもある。一般的には、決められた順路に従って展示物を鑑賞し、その展示物のキャプションによって、展示する側の意図に沿うように「理解」していくことになる。こうしたミュージアムの近代教育学的構造も、検討する余地があるというのが、2013年度末の段階での本研究の到達点である。なお、本研究を起ち上げたモチーフの一つである、教科教育学と教育哲学、思想史の研究交流も、順調に進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は研究分担者それぞれの専門領域を援用した、「言語活動」概念の思想史的研究やコミュニケーション論の研究を深める予定であり、これは個人の研究の延長というやや消極的な研究目標であった。しかし2013年度の研究の進展により、当初の目標をはるかに超え、「ミュージアム」という本研究の核心に関わる分析枠組みを獲得できた。このことは、私たちにとっては当初計画以上の進展であったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
本格的に「ミュージアム」という分析枠組みを用いて、「言語活動」を誘発する環境的要因に関する研究を深めていきたいと考えている。そのためには、実際に美術館や博物館の学芸員や博物館学の研究者との交流が求められるように思われる。すでに着手しているところであるが、たとえば学芸員という、モノを「展示する側」がどのような意図をもって「展示」という営為を行っているのかを検討するような研究会や学会活動を積極的に行う必要があると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額の大半は、研究分担者牧戸章氏の未使用額である。氏に多くの未使用額が生じたのは、年度の途中より氏が体調不良のため分担金を執行することが困難になったためである。 上記の理由で、牧戸氏が2014年度からは研究分担者からはずれることになった。そのため、今後は牧戸氏が遂行する予定であった研究の一部を残りのメンバーで分担して行うこととなる。基本的には、当初の予定に沿った2014年度分の配分額に加えて、2013年度の未使用額を、牧戸氏の行うはずであった研究を分担する割合に応じて、研究メンバーに配分することで、牧戸氏の穴を補うようにする。
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