研究課題/領域番号 |
25381199
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柴 一実 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60145175)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 理科研究中央委員会 / 理解の目標 / 香川県小学校教育課程 / 横浜市教育課程理科篇 / 南太田プラン |
研究実績の概要 |
本年度の研究目的は,1947(昭和22)9月に「理科研究中央委員会(Advisory Committee on Science Curriculum)」によって作成された「理解の目標(Objectives of Understandings)」が1947(昭和22)年5月に発行された『学習指導要領・理科編(試案)』に代わる教育内容のスコープとシークエンスの基準として,昭和20年代に都道府県教育委員会や全国各地の学校などで開発された小学校理科カリキュラムにおいてどのような役割を果たしたのかを検証することであった。今回,研究対象とした小学校理科カリキュラムは,香川県教育委員会編『香川県小学校教育課程-生活カリキュラムにおける理科学習-』(1950),横浜市教育委員会編『横浜市教育課程理科篇・小学校の部試案』(1951),横浜市立南太田小学校編『科学教育・南太田プラン』(1952),であった。 一般に,昭和20年代に作成された小学校理科カリキュラムは日常生活における問題解決に主眼を置き,教育内容のスコープとシークエンスにおいて科学性や関連性などをほとんど顧みず作成されたと考えられており,教育内容の系統性は昭和33年版小学校理科学習指導要領によって初めて実現したと言われている。しかしながら,先の三者の理科カリキュラムにおいて,光教材を例に分析したところ,県,市及び学校レベルの理科カリキュラムは理科研究中央委員会によって作成された「理解の目標」(1947)を教育内容のスコープとシークエンスの基準として,子どもの心理的理解のプロセスに従って,自然の事物や原理,法則などを習得したり,概念の理解を図ることを目指すカリキュラム構造を構築していたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究を通して,戦後日本における小学校理科カリキュラムの成立に関して,教育内容のスコープとシークエンスの基準として「理解の目標」が果たした役割が県,市及び学校レベルのカリキュラムにおいて実証することができている。そもそも「理解の目標」を教育内容のスコープとシークエンスとして作成するという考えはアメリカ側イノベータであるGHQ/SCAP/CIE係官のK.M.ハークネスやV.T.エドミストンらによってもたらされたものである。彼(彼女)らは「理解の目標」にどのような意味を込め,改革の意向を示そうとしたのか。また日本側イノベータである文部省係官の岡現次郎や永田義夫らは「理解の目標」をどのように捉え,理科カリキュラムの変革を行おうとしたのか。これらの点を明らかにすることが今後の課題として残された。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的で示したように,戦後日本の理科教育改革を担った日米イノベータのうち,岡現次郎や永田義夫,V.T.エドミストン,G.S.クレイグらの思想や行動様式などについては徐々に明らかになっている。当初の計画では,日米イノベータの活動を紹介する冊子作成等を予定していたが,現在のところ,岡現次郎,永田義夫,河野通匡,松井富一,V.T.エドミストン,G.S.クレイグなど,日米イノベータに関する研究をさらに精緻化することが必要である。今後,これらの点の解明を研究の中心に据えたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,研究計画で予算計上していたマイクロフィルム等の購入が進まなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度はマイクロフィルムの購入に加えて,シカゴ大学附属実験学校の科学教師であったB.M.Parkerによって編集され,戦後検定教科書のモデルとして『第4~6学年用小学生の科学』(1948・49)編纂に多大な影響を与えた“Basic Science Education Series”の購入を計画している。
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