研究実績の概要 |
第2年次の本年度は、第1年次に取り上げたプレプリマ『まことさんはなこさん』に続いて、プリマ『いなかのいちにち』、第一読本『いさむさんのうち』について関係資料を調査・収集した。その結果、これらの教科書は、前教科書に比べて、CIEの検閲が比較的緩やかになされていることが判明した。Conference ReportsやWeekly Reportsなどに、その修正指示の痕跡がほとんど見られないからである。その理由として、大きくは次の2点を指摘することができる。 1)CIE係官の入門期国語教科書の考え方を理解・反映させて編集したこと 子どもの心理的発達に沿っていること、新しい言葉(語彙)を多くしないこと、言葉をリズミカルに繰り返し用いること、子どもの生活物語として展開することなど、CIE係官ヤイディ、ストリックランドの考え方・指示をあらかじめ踏まえて編集している。 2)アメリカの入門期国語教科書を参考にして進めたこと。 ”Today's Work-Play Books”,”Happy Road to Reading”,”Child Experience Reading”,”Progress in Reading”,”Child Activity Readers”,”The Highway to Reading”,Easy Growth in Reading”など、アメリカの教科書を参考にしながら編集を進めたようである(石森延男「敗戦直後の国語教育」、「現代教育科学」99号、1966.2)。同年齢の子どもの生活を一連の物語として展開する手法は、これらに拠ったものと考えられる。 こうして編集・発行されたこれらの入門期国語教科書は、これに続く検定教科書の1年生用国語教科書のモデルとして大きな影響を与えていくことになった。その意味でも国語教科書史上、画期的な国語教科書と言えよう。
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