本研究では、アジアの多民族社会における文化のグローバル化とナショナル・アイデンティティーの関係を、シンガポールと台湾の政策と音楽文化の検証を通して明らかにした。台湾では国民党政府による大陸の音楽文化普及や愛国歌曲は根付かず、民衆は独自に台湾アイデンティティーを築いていること、シンガポールでは国家のNational Day songsなどによるアイデンティティー教育は成功しているかに見えるが、音楽自体が西洋的なうえ、経済発展優先政策のために、独自文化の創造よりは西洋発の音楽文化を志向するコスモポリタンへとなりつつあることを明らかにした。
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