研究課題/領域番号 |
25381206
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
金子 宜正 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 教授 (20263965)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヨハネス・イッテン / バウハウス / イッテン・シューレ / 美術教育 / 芸術教育 |
研究概要 |
ヨハネス・イッテンは、バウハウスにおける独創的な芸術教育で知られる、20世紀における代表的な美術教育者の一人である。イッテンは、造形要素を捉える上でコントラストを重視し、また、東西の思想を探究し、芸術教育を通した総合的な人間形成を目指していた。これまでの研究を通して、研究代表者は、イッテンと水墨画や禅思想、日本人とのつながり、イッテンの芸術教育にみられる人間を中心とする考え方等について明らかにしてきた。また、バウハウスの芸術教育には、イッテンをはじめとして、対比的な思考や対極的な概念がみられることを指摘したが、一連のイッテン研究の中で、対比・対極を活かすことの教育的な価値を実践的な側面からも明らかにした。 25年度は、当時の国内外における芸術思潮や芸術教育にかかわる著述等についての研究調査を行い、イッテンの芸術教育と我が国の美術教育とのかかわりや、現地の芸術や教育にみられる影響について研究を進めた。併せて、イッテンの著述についても継続して研究を行った。本研究では、芸術教育を単に方法論として捉えるのではなく、時代の影響をふまえ、様々な場面に応用できる教育上の考え方を導き出すことを視野に入れて調査を行った。そして、イッテンの芸術教育と人間形成とのかかわりをふまえ、イッテンの芸術教育上の思索を浮かび上がらせるとともに、その後に与えた影響や教育的意義について取り組んできた。目下、これまで国内外で調査した資料(活字化されていない手書き資料等を含む)の解読と内容分析を継続的に進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究の初年度にあたり、ヨハネス・イッテンが活発に芸術教育を展開していた時期の国内外における芸術や芸術教育にかかわる著述(新聞雑誌等を含む)及びオリジナル資料、イッテンの影響がみられる人物等にかかわる資料についての研究調査を進めた。また、イッテンの芸術教育と我が国の美術教育動向とのかかわりや、現地の芸術や教育の動向にみられる影響などについての研究を行った。調査の際には、現地の研究機関の研究者等と意見を交わすとともに、関係者への聞き取り調査を行うことができた。併せて、本研究とかかわりのある、イッテンの著述についても研究を行った。現在、これまでの国内外における研究調査をふまえ、活字化されていない手書き資料等を含む関係資料の解読と内容分析を継続的に進めているところである。イッテンの芸術教育は人間形成を意識したものであったが、その根底にある、イッテンの芸術教育上の思索を浮かび上がらせるとともに、その後に与えた影響や教育的意義について取り組んできた。本研究の調査を進める中で、イッテンの活躍した時代の思想的背景や当時親交があった人々との交流がどのようなものであったかなどが徐々に明らかになっている。 25年度には欧州における2回の海外調査を予定していたが、そのうちの1回については、所蔵先の資料整理が進み、より充実した調査が可能となる26年度に実施することとした。 このような経緯から、当該研究の初年度として、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ヨハネス・イッテンの芸術教育と我が国の美術教育とのかかわりや、現地の芸術活動や教育活動への影響などについての研究を進め、イッテンが活躍した当時の芸術にかかわる思想や芸術教育の動きを示す著述(新聞雑誌等を含む)及びオリジナル資料、イッテンの影響下にあったと考えられる人物等にかかわる資料等についての研究調査を国内外で行う。また、25年度の研究調査で得た資料の内容分析を進めるとともに、関連する出版物や資料についての研究調査を行う。併せて、本研究とかかわりのある、イッテンの著述についての研究を継続する。さらに、現地の研究機関等の研究者と最新の研究動向についての意見交換を行うとともに、関係者等への聞き取り調査を実施する。活字化されていない手書きの資料については、記述内容を解読し、分析する作業を継続的に進める。本研究を通して、イッテンの活躍した時代の芸術にかかわる思想的な背景やイッテンがどのような人々と交流をもっていたのかなどを明らかにし、時代の影響をふまえた上で、イッテンの芸術教育の実像、彼の教育上の考え方や実践的な教育活動の成果、イッテンの教育上の思索がその後に与えた影響やその教育的意義などについて明らかにしていきたいと考えている。 また、当初25年度に欧州における2回の海外調査を予定していたが、そのうちの1回については、当該資料所蔵先の資料整理が進むことから、26年度の方がより充実した資料調査ができることが判明したため、この研究調査は26年度に実施することとした。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヨハネス・イッテンの芸術教育や芸術教育上の思索等にかかわりのある資料についての研究を進める中で、当初25年度に欧州において2回の海外調査を計画していたが、そのうちの1回は、26年度に実施する方が、所蔵先の資料整理が進み、より充実した資料調査ができることが判明した。そのため、この資料所蔵先における調査については、26年度に実施することとし、その分を25年度未使用額として、26年度に繰り越すこととした。 当初25年度に調査を考えていた欧州の資料所蔵先において、先方の資料整理の進行状況から、26年度に研究調査を実施する方が、より充実した調査が可能であることがわかった。そのため、この調査にかかる費用を25年度未使用額として繰り越し、26年度の研究費と合わせて、当該資料所蔵先における研究調査を実施できるように計画した。
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