本研究では、近年のドイツにおける教育改革から学力観を考察し、その学力観のもとで作成された学習指導要領を検討することで、ドイツでは初等段階と中等段階をどのように接続するカリキュラムを構築しているのかを明らかにすることをめざした。 本研究の意義は以下の点である。第1は、ドイツにおけるカリキュラムの再編を教育改革の視点から明らかにした点である。第2は、事実教授の歴史的展望や歴史科においてめざすべき目標が歴史意識の育成であると確定した点である。第3は、ドイツのカリキュラムにおいては、コンピテンスが能力枠として機能していることを示した点である。第4は、能力枠としてのコンピテンスの到達水準が明示化されていることを提示した点である。第5は、歴史意識の育成という歴史科の教育目標、コンピテンスという能力枠、到達水準が初等段階と中等段階の接続を可能にする要件であることを解明した点である。これら3要件が有機的に機能することで各学習指導要領において両段階の接続が実現されていることを検討した。 以上5点の意義から、歴史スタンダード・カリキュラムを開発するためには、日本においても歴史的分野独自の教育目標、コンピテンスという能力枠、到達水準を設定することが急務の課題であることを明らかにした。
|