本研究の目的は,音楽科教育においてまだ着目されていないアレクサンダー・テクニークを応用することにより,小学校と中学校教員のための体系的な発声指導プログラムを開発することである。 27年度は,まず,アレクサンダー・テクニークの主要概念であり,開発したこれまでの指導プログラムを貫く概念でもあるインヒビション(抑制)とダイレクション(方向性)を中心に,習得体験を具体的事例として分析,考察した。これを踏まえて,プログラムを発展させる新たな活動として,身体のバランス感覚を体感するための5つの活動を提案し,研究論文「アレクサンダー・テクニークにおける動きを用いた歌唱指導の可能性」にまとめた。また,前年度,明らかにした,「ウィスパード・アー」の教育的可能性と組み合わせて,最終的に,研究論文「音色と響きを獲得するための発声指導プログラム〈自然な歌声でⅡ〉」において,音色・響きを獲得するための発声指導プログラムを提案した。開発した指導プログラムは,2つのプログラムから構成され,それぞれ5~6の活動を含んでいるが,これまでの歌唱指導とは全く異なったアプローチをとっており,きわめて効果的な発声指導の方法となっている。 本年は,研究の最終年度にあたるため,これまでの研究のまとめとして,平成27年度日本音楽教育学会九州地区例会(平成28年2月28日)において,「音色と響きを獲得するための発声指導プログラムの開発」と題して,研究発表を行うとともに,「発声指導プログラム〈自然な歌声で〉」というテーマで,小学校,中学校音楽教員を対象に,実演を交えた講習会(平成28年3月19日)を開催した。 最終的な成果は,「発声指導に悩みを抱える教師のための手引書 発声指導プログラム〈自然な歌声で〉」としてまとめ,大分県内の小学校,中学校の音楽担当教員を中心に,成果の還元を行った。
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