本研究の目的は、教員養成における児童の内的フィードバック能力(自分自身の歌唱の音高・音程が合っているかどうかについての認知)の獲得と心理面に着目した音痴克服歌唱指導プログラムの開発と適用である。 平成27年度の主な成果としてまず、平成25年度、26年度と同様に、小学校教員養成課程に在籍するA大学の学生約250名を対象とした学生自身の音痴意識に関する質問紙調査を実施した。本人の「音痴」意識を問う質問では、自分自身のことを「非常に『音痴』」に9.1%、「少々『音痴』」に37.5%の学生が回答しており、合計46.6%の学生が自分自身を「音痴」だと意識していることがわかった。この結果は、平成25年度の調査結果と同様に、2000年の同質問紙調査の結果(小畑 2002)との比較において大きな違いが認められなかった。 また、昨年度に引き続き聴覚障害学生を対象とした内的フィードバック能力の獲得を目指した歌唱指導を実施し、対象者の内的フィードバック能力の向上と、歌唱に対する意識の変化を確認することができた。 上記の研究成果と、昨年度実施した研究協力校での内的フィードバックができるための歌唱指導の結果を踏まえて、音痴克服歌唱指導プログラムを開発した。プログラムは講義と演習で構成され、演習では声によるピッチマッチ、内的フィードバックの指導などについて、受講者同士でグループとなり、ロールプレイ形式で学ぶ。本プログラムを用いた指導を、A大学教員養成課程の学生約100名を対象に行った。さらにその中の4名の学生が、プログラムで学んだスキルを用いてB小学校の小学6年生8名に対して継続的な歌唱指導を試み、本プログラムの有効性について検証した。
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