研究課題/領域番号 |
25381236
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
内田 裕子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (40305024)
|
研究分担者 |
大岩 幸太郎 大分大学, 教育福祉科学部, 名誉教授 (90223726)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 色彩学習 / 模倣 / 教員養成 / 色彩調和 / 教育普及 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,「『色彩学習プログラム』の設計・構築」及び「『色彩学習プログラム』における学習過程の分析」の研究に取り組んだ。 「『色彩学習プログラム』の設計・構築」に際しては,当初の計画では盛り込まれていなかった鑑賞教育の目的や方法についても取り上げ,美術教育の歴史と現在の実践から研究した。その際,現在の美術教育の実践については,昨年度調査を行ったオーストリア,ハンガリー,チェコ,デンマークの各国立美術館も対象とし,そこでの鑑賞方法や展示方法についての分析を行った。 また,「『色彩学習プログラム』における学習過程の分析」については,これまでに開発した,色彩学習の手段の一つである,自身の色彩感覚を確認するためのプログラムにおいて用いた,見本の色と同じ色を作る方法についての有効性を確認するため,教育における「模倣」を用いる学習について検討した。現在の美術教育では余り行われることのない手本を真似る作業の意義を知るため,様々な教育場面における「模倣」を採り入れた学習方法や内容を調査し検討した結果,模倣を有効活用している場面があることを確認すると共に,その有効性についても確認した。 以上の研究に基づき,再度「色彩学習プログラム」を検討したところ,当初考えた「3軸空間イメージソーター」を活用したプログラムでは,各人の好みの色や各人が作品に使用した色を分析することは可能であっても,その結果を色彩感覚の改善に利用するには,「3軸空間イメージソーター」の活用に多くの労を要する割に効果が薄いことが明らかとなった。そこで発想を変え,子どもたちが能動的に取り組む学習方法を有する「色彩学習プログラム」の開発を目指すこととした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画調書に記載した研究内容は概ね遂行しつつあるが,研究の過程において生じた,計画調書には記載していなかった下記の課題についての解決が加わったため,その点を加味して上記の達成度とした。 <課題> (1) 「色彩学習プログラム」に用いる「3軸空間イメージソーター」を検討した結果,「3軸空間イメージソーター」では,各人の色彩使用の傾向を知ることは可能であるが,煩雑な作業を強いる割には,その結果が色彩学習に影響を与えるとは限らないことが判明したため,新たな「色彩学習プログラム」の開発を検討することにした。 (2) 昨年度の研究結果から,「色彩学習プログラム」においては鑑賞教育の要素も含めることにしたが,その際,昨年度調査した欧州の美術館における教育普及活動での鑑賞方法及び鑑賞内容を「色彩学習プログラム」に取り込む方法を検討した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては,新たに考案した「色彩学習プログラム」を完成させ,それを「自学自習」のために供する「自学自習用ソフトの公開に向けた研究」を行う。具体的には「色彩学習プログラム」の一部をWebページに載せ,Webから得られたモニタリングの結果を「色彩学習プログラム」の改良のために活用すると共にプログラムの検証に用いる。 なお,現在までの研究で明らかになったことから,「色彩学習プログラム」の最終目標が「良い」色彩感覚を習得することであるという原点に立ち返り,「色彩学習プログラム」の完成に際しては,当初の案には無かった「楽しみながら学習する」点を「色彩学習プログラム」の要素に加える。学習を促進するため,プログラムの実施過程における「楽しむ」仕組みを検討し,最も有効な仕組みを採り入れたアプリケーションソフトを作成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者に次年度使用額が生じた理由は,年度末に発行される予定であった学会誌(美術教育学研究)の納品が4月に延期されたことで,年度内での支払いが適わず次年度使用額となった。 研究分担者に次年度使用額が生じた理由は,上記の様な「色彩学習プログラム」設計上の変更が生じたことで,新たなプログラム内容の検討及び試作が研究の中心になった点が挙げられる。そのためプログラムの完成に至らず,開発結果を実装するために予算に計上した「ソフトウェア開発の専門技術者の雇用」及び「色彩学習プログラム」の実施のための「タブレット型コンピュータ」の購入,更に,プログラムを実施するための「モニタの雇用」の支出が延期されたため,次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究代表者分の残額に関しては,上記,学会誌の掲載料及び別刷代に充て,研究分担者の残額に関しては,上記「理由」に挙げた,「ソフトウェア開発の専門技術者の雇用」,「色彩学習プログラム」実施のための「タブレット型コンピュータ」の購入,プログラム実施のための「モニタの雇用」として使用する。
|