本研究では、歴史教育で従来から批判されてきた小・中学校での通史学習の繰り返しの問題点の解決方法を明らかにした。その方法とは小・中学校を一貫して、現代社会の理解と結びつけて子どもの歴史認識を自律的、段階的に発展させる歴史カリキュラムの単元開発である。研究ではまず、通史の繰り返し学習の問題の解決に向けて先駆的研究を進めている米国の歴史学習の原理を明らかにして、その原理を応用して歴史カリキュラム単元を開発した。開発した単元は、①科学の論理に重点をおいて出来事を解釈し、意味づけることで子ども自身が歴史像を作っていく研究的歴史構築学習を基礎とするもの、さらにこの研究的歴史構築学習を発展させて、②批判の論理に重点をおいて出来事を解釈し、意味づける社会的歴史構築学習を展開するものの2タイプの単元である。単元で取り上げた内容領域は、歴史研究の特性、人物の行為(指導者の意思決定)、紛争(戦争)、ジェンダー、社会集団の心理(宗教)である。これらの内容は、現代的な社会問題であり、現代社会の理解につながる社会的見方・考え方を育成するものである。また、子どもを追求へと動機づけ、自分自身の問題として歴史を追究する学習問題としては、①歴史の中の問題、②歴史を通した問題、③歴史の認知の問題を設定して単元を構成した。開発した単元は現行の小・中学校の歴史学習の中に投げ入れ的に組み込むことができる方式を採っており、開発した単元の利用の容易さと、現状の問題点を実質的に改善できるものとなっている。本研究で開発した歴史カリキュラム単元は、教育学部の研究紀要や研究誌に3本の研究論文として公開し、小・中学校の教員が活用できるようにした。
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