中学校技術・家庭科の技術分野を対象とした,設計学習を支援するシミュレーション教材を開発し,現代のものづくりにおいて欠かせない役割を果たしているシミュレーション技術について学習し,技術リテラシーの習得を目標とした授業実践を行いその成果について検証した。 まず,ソフトウェアの開発について述べる。中学校の技術科に関する授業数を考慮すると,構造設計に関する学習時間はほとんど確保できないのが実情である。そのような中,ソフトウェアの操作学習に時間を割くことは現実的ではない。そこで,本研究ではインタラクティブな操作性を有し,ユーザビリティを考慮したユーザーインタフェースとなるよう構築した。中学生を対象に実践した結果,開発したソフトウェアを活用するための操作学習に要する時間は約5分程度であり,1モデルの設計から評価までを数分で完了できることが確認できた。また,精度についても,剛性を定量的に評価できる精度を有することを実験との比較により明らかにした。 次に,中学校技術科の授業計画を立案し,実践を行った。特に,シミュレーション技術を導入した事による教育効果とともに,構造設計に関する知識について調査した。その結果,構造と強度の関係に関する基本的知識については習得できていることが確認できた。また,シミュレーション技術を援用して設計学習を行うことで,多くのモデルの設計・評価を行うことができるため,試作レスで設計学習に試行錯誤して取り組めること,またCAEに代表される現代のものづくり技術についても関心を持ち,授業内で対象とした製作物以外にもシミュレーション技術を活用して設計されていることに関心を持つことが分かった。 以上のように,本開発教材の活用を通じて,構造と強度について学習できるとともに,現代のものづくり技術を支えているシミュレーション技術の役割についても学習できるといえる。
|