日本における危機対応への意識は年々高まっている。これまで,石油危機や湾岸戦争などの国際的相互依存の深化の中で起こる危機を始めとして,震災や風水害などの大規模自然災害,船舶・飛行機事故や原子力発電所などの重大事故,暴動やハイジャック,大量殺傷型テロなどの重大事件,日本への武力攻撃など,緊急事態に対してその対応力が求められている。しかし,阪神・淡路大震災と東日本大震災以降,日本の危機対応には数々の課題が浮き彫りになっているのも事実である。この危機対応のために必要なのが危機対応マネジメントの視点である。マネジメントとは,目標や目的を明確にして,必要な要素を分析し,対応していくことである。本研究では,社会科授業において,危機対応マネジメントをリスク・マネジメント→クライシス・マネジメント→ナレッジ・マネジメントのフローで捉えて,子どもの危機対応マネジメント育成に関わる社会科授業の原理と構造を解明し,社会科カリキュラムの基盤となる授業モデルを提案している。 また,教職大学院教育実践高度化専攻・小学校教員養成特別コースの教育実践研究(アクション・リサーチ)において,研究室に所属しているゼミ生の教育実践活動に着目をして,実践者の行動を観察して,その結果に基づいて内省し,社会科授業評価スタンダード開発を行った。教師側からのトップダウンの授業構成ではなく,子どもの興味・関心を基にしてボトムアップ的にトピックを次々と展開させていくことで学習問題に迫っていく仮説推論的な学習方法論の有効性と,教師の専門職としてのスキルを①授業計画力②授業展開力③子ども理解力④授業省察力を位置づけ,社会科授業評価スタンダード開発につなげた。今後とも,他学年や他単元を研究対象として,継続して研究に取り組み,社会科授業評価スタンダードの加筆・修正に取り組みたい。
|